**歴史と概要 [#j6efef6c]
''凱旋門賞(Le Prix de l'Arc de Triomphe)''は、フランスの&size(16){パリ};&size(16){ロンシャン競馬場で行われるG1平地競走である。};
開催日は10月の第1日曜日。
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このレースは世界で最も権威のあるレースとされ、レースの質的にも最も難しいレースであるとされる。
3歳以上のサラブレッド種の牡馬(騙馬を除く)と牝馬が出走できるG1レースで、ロンシャン競馬場のメインコース、2,400メートルのクラシックディスタンスで行われる。賞金総額は500万ユーロ。
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19世紀前半までのフランス競馬は、出走枠を国内生産の馬に限定されていたが、1863年に競馬の組織団体であるアンカレッジ協会(Société d'Encouragement)が、国際的な最優秀3歳馬のみが参加できる「パリ大賞典(le Grand Prix de Paris)」を創設。
その30年後、さらに国際的なイベントとして「コンセイユ・ミュニシパル賞(le Prix du Conseil Municipal)」が創設された。この賞は、各国から集まった同年齢の最優秀馬を競わせるもので、各選手のこれまでの成績によってウェイトが決められる。
1920年、あらゆる国籍、年齢の馬、牡馬、牝馬(騙馬を除く)が参加できるレースが創設されたが、その際、ハンディキャップ方式による成績ではなく、参加者の年齢と性別によってウェイトが決定されることになった。1919年に第一次世界大戦の勝利を祝う連合軍のパレードが行われた記念碑にちなみ、「''凱旋門賞''」と命名された。
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第1回は1920年10月3日(日)に開催され、フランスの3歳馬コムラーデ(Comrade)が優勝した。
1923年にはパース(Parth)が外国馬として初めて優勝し、1931年にはパールキャップ(Pearl Cap)が牝馬として初めて優勝した。
1939年と1940年は第二次世界大戦の勃発により中止となり、1943年と1944年にはトレンブレー競技場で2,300メートルのレースとして代替開催された。
2016年と2017年は、ロンシャンで大規模な改修工事が行われたため、シャンティイ競馬場に移して開催された。
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凱旋門賞の賞金は年々着実に増加している。1920年には15万フラン(およそ20万円)であったが、2014年からは500万ユーロ(およそ7億8千万円)に上昇し、スポンサーのおかげで世界で最も恵まれたG1レースとなっている。
現在のスポンサーはカタール・レーシング&馬術クラブ(QREC)で、2008年にドーハで締結されたフランス・ギャロップとの契約に基づき、2008年から2022年までの開催を対象としている。
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開催時期は「ウマ娘」に倣い近年の開催時期からおおよその時期を想定。
距離表記は「メートル」で統一。100m単位で四捨五入して表記している。
|開催時期|競走名|国|場所|出走条件|馬場/距離|関連情報|
|10月前半|凱旋門賞|フランス|ロンシャン|3歳以上牡馬・牝馬|芝&br;2,400m(中距離)右||
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**歴代優勝馬 [#e53a3ed9]
海外のレースは「第○○回~」という数えはしないが、ここでは便宜上回数を計上している。
国籍は出走当時に所属としていたもの。
|回数|年次|優勝馬|性齢|国籍|タイム|
|第1回|1920|コムラーデ&br;Comrade|牡3|フランス|2:39.00|
|第2回|1921|クサール&br;Ksar|牡3|フランス|''2:34.80''|
|第3回|1922|クサール&br;Ksar|牡4|フランス|2:38.80|
|第4回|1923|パース&br;Parth|牡3|イギリス|2:38.20|
|第5回|1924|マシーン&br;Massine|牡4|フランス|2:40.80|
|第6回|1925|プリオーリ&br;Priori|牡3|フランス|''2:33.80※''|
|第7回|1926|ビリビ&br;Biribi|牡3|フランス|''2:32.80''|
|第8回|1927|モン・タリスマン&br;Mon Talisman|牡3|フランス|''2:32.80''|
|第9回|1928|カンタル&br;Kantar|牡3|イギリス|2:38.80|
|第10回|1929|オルテッロ&br;Ortello|牡3|イタリア|2:42.80|
|第11回|1930|モトリコ&br;Motrico|牡5|フランス|2:44.80|
|第12回|1931|パールキャップ&br;Pearl Cap|牝3|フランス|2:38.80|
|第13回|1932|モトリコ&br;Motrico|牡7|フランス|2:44.60|
|第14回|1933|クラポン&br;Crapom|牡3|イタリア|2:41.60|
|第15回|1934|ブラントーム&br;Brantôme|牡3|フランス|2:41.80|
|第16回|1935|サモス&br;Samos|牝3|フランス|2:42.60|
|第17回|1936|コリダ&br;Corrida|牝4|フランス|2:38.60|
|第18回|1937|コリダ&br;Corrida|牝5|フランス|2:33.90|
|第19回|1938|エクレア・オ・ショコラ&br;Éclair au Chocolat|牡3|フランス|2:39.80|
|-|1939|>|>|>|開催中止|
|-|1940|~|~|~|~|
|第20回|1941|ル・パシャ&br;Le Pacha|牡3|フランス|2:36.20|
|第21回|1942|ジェベル&br;Djebel|牡5|フランス|2:37.90|
|第22回|1943|ヴェルソ&br;Verso Ⅱ|牡3|フランス|2:33.40|
|第23回|1944|アルダン&br;Ardan|牡3|フランス|2:35.00|
|第24回|1945|ニケヨハ&br;Nikellora|牝3|フランス|2:34.80|
|第25回|1946|キャハキャラ&br;Caracalla|牡4|フランス|2:33.30|
|第26回|1947|ル・パイヨン&br;Le Paillon|牡5|フランス|2:33.40|
|第27回|1948|ミゴリ&br;Migoli|牡4|イギリス|''2:31.60''|
|第28回|1949|コロネーション&br;Coronation|牝3|フランス|2:38.60|
|第29回|1950|タンティエーム&br;Tantième|牡3|フランス|2:34.20|
|第30回|1951|タンティエーム&br;Tantième|牡4|フランス|2:32.80|
|第31回|1952|ヌッチョ&br;Nuccio|牡4|フランス|2:39.80|
|第32回|1953|ラ・ソレリーナ&br;La Sorellina|牝3|フランス|2:31.80|
|第33回|1954|シカボーイ&br;Sica Boy|牡3|フランス|2:36.30|
|第34回|1955|リボー&br;Ribot|牡3|イタリア|2:35.60|
|第35回|1956|リボー&br;Ribot|牡4|イタリア|2:34.70|
|第36回|1957|オロゾ&br;Oroso|牡4|フランス|2:33.40|
|第37回|1958|バリーモス&br;Ballymoss|牡4|アイルランド|2:37.90|
|第38回|1959|セント・クレスピン&br;Saint Crespin|牡3|フランス|2:33.30※|
|第39回|1960|ピュイソンシェフ&br;Puissant Chef|牡3|フランス|''2:30.90''|
|第40回|1961|モルヴェド&br;Molvedo|牡3|イタリア|2:33.40|
|第41回|1962|ソルティコフ&br;Soltikoff|牡3|フランス|''2:30.90''|
|第42回|1963|エクスバリー&br;Exbury|牡4|フランス|2:35.00|
|第43回|1964|プリンス・ローヤル&br;Prince Royal|牡3|フランス|2:35.50|
|第44回|1965|シーバード&br;Sea Bird|牡3|フランス|2:35.50|
|第45回|1966|ボン・モ&br;Bon Mot|牡3|フランス|2:39.80|
|第46回|1967|トピヨ&br;Topyo|牡3|フランス|2:38.20|
|第47回|1968|ヴェイグリーノーブル&br;Vaguely Noble|牡3|フランス|2:35.20|
|第48回|1969|レヴモス&br;Levmoss|牡4|アイルランド|''2:29.00''|
|第49回|1970|ササフラス&br;Sassafrás|牡3|フランス|2:29.70|
|第50回|1971|ミルリーフ&br;Mill Reef|牡3|イギリス|''2:28.30''|
|第51回|1972|サンサン&br;San San|牝3|フランス|''2:28.30''|
|第52回|1973|ラインゴールド&br;Rheingold|牡4|イギリス|2:35.80|
|第53回|1974|アレフ・フォンス&br;Allez France|牝4|フランス|2:36.90|
|第54回|1975|スターアピール&br;Star Appeal|牡5|ドイツ|2:33.60|
|第55回|1976|イヴァニカ&br;Ivanjica|牝4|フランス|2:39.40|
|第56回|1977|アレッジド&br;Alleged|牡3|アイルランド|2:30.60|
|第57回|1978|アレッジド&br;Alleged|牡4|アイルランド|2:36.50|
|第58回|1979|スリートイキャ&br;Three Troikas|牝3|フランス|2:28.90|
|第59回|1980|デトロイト&br;Detroit|牝3|フランス|''2:28.00''|
|第60回|1981|ゴールドリバー&br;Gold River|牝4|フランス|2:35.40|
|第61回|1982|アキーダ&br;Akiyda|牝3|フランス|2:37.00|
|第62回|1983|オールアロング&br;All Along|牝4|フランス|2:28.10|
|第63回|1984|サガス&br;Sagace|牡4|フランス|2:39.10|
|第64回|1985|レインボウクエスト&br;Rainbow Quest|牡4|イギリス|2:29.50※|
|第65回|1986|ダンシングブレーヴ&br;Dancing Brave|牡3|イギリス|''2:27.70''|
|第66回|1987|トレンポリーノ&br;Trempolino|牡3|フランス|''2:26.30''|
|第67回|1988|トニービン&br;Tony Bin|牡5|イタリア|2:27.30|
|第68回|1989|キャロルハウス&br;Carroll House|牡3|イギリス|2:30.80|
|第69回|1990|ソーマレズ&br;Saumarez|牡3|イギリス|2:29.80|
|第70回|1991|シュアーヴダンサー&br;Suave Dancer|牡3|フランス|2:31.40|
|第71回|1992|スボティキャ&br;Subotica|牡4|フランス|2:39.00|
|第72回|1993|アーバンシー&br;Urban Sea|牝4|フランス|2:37.90|
|第73回|1994|カーネギー&br;Carnegie|牡3|フランス|2:31.10|
|第74回|1995|ラムタラ&br;Lammtarra|牡3|イギリス|2:31.80|
|第75回|1996|エリッシオ&br;Helissio|牡3|フランス|2:29.90|
|第76回|1997|パントセレーブ&br;Peintre Célèbre|牡3|フランス|''2:24.60''|
|第77回|1998|サガミクス&br;Sagamix|牡3|フランス|2:34.50|
|第78回|1999|モンジュー&br;Montjeu|牡3|フランス|2:38.50|
|第79回|2000|シンダー&br;Sinndar|牡3|アイルランド|2:25.80|
|第80回|2001|サクヒー&br;Sakhee|牡4|イギリス|2:36.10|
|第81回|2002|マリーンバード&br;Marienbard|牡5|イギリス|2:26.70|
|第82回|2003|ダラカニ&br;Dalakhani|牡3|フランス|2:32.30|
|第83回|2004|バゴ&br;Bago|牡3|フランス|2:25.00|
|第84回|2005|ハリケーンラン&br;Hurricane Run|牡3|フランス|2:27.40|
|第85回|2006|レイルリンク&br;Rail Link|牡3|フランス|2:31.70|
|第86回|2007|ディラン・トーマス&br;Dylan Thomas|牡4|アイルランド|2:28.50|
|第87回|2008|ザルカヴァ&br;Zarkava|牝3|フランス|2:28.80|
|第88回|2009|シー・ザ・スターズ&br;Sea The Stars|牡3|アイルランド|2:26.30|
|第89回|2010|ワークフォース&br;Workforce|牡3|イギリス|2:35.30|
|第90回|2011|デインドリーム&br;Danedream|牝3|ドイツ|''2:24.49''|
|第91回|2012|ソレミア&br;Solémia|牝4|フランス|2:37.68|
|第92回|2013|トレーヴ&br;Trêve|牝3|フランス|2:32.04|
|第93回|2014|トレーヴ&br;Trêve|牝4|フランス|2:26.05|
|第94回|2015|ゴールデンホーン&br;Golden Horn|牡3|イギリス|2:27.23|
|第95回|2016|ファウンド&br;Found|牝4|アイルランド|'''2:23.61※'''|
|第96回|2017|エネーブル&br;Enable|牝3|イギリス|2:28.69|
|第97回|2018|エネーブル&br;Enable|牝4|イギリス|2:29.24|
|第98回|2019|ワルジェスト&br;Waldgeist|牡5|フランス|2:31.97|
|第99回|2020|ソットサス&br;Sottsass|牡4|フランス|2:39.30|
|第100回|2021|トルクエイタータッソ&br;Torquator Tasso|牡4|ドイツ|2:37.62|
|第101回|2022|アルピニスタ&br;Alpinista|牝5|イギリス|2:35.71|
-1925年の凱旋門賞は、カドゥム(Cadum)が1位入線したが、審議の結果降格された。
-1959年の凱旋門賞は、ミッドナイト・サン(Midnight Sun)が1位入線したが、審議の結果降格された。
-1985年の凱旋門賞は、サガス(Sagace)が1位入線したが、最終直線での斜行を進路を妨害したと審議され降格した。
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**日本調教馬の挑戦 [#rad1e6fb]
+1969年、天皇賞馬のスピードシンボリが出走し、着外(11着以下)に敗れた。
+1972年、天皇賞馬のメジロムサシが出走し、18着に敗れた。
+1985年、日本ダービー馬のシリウスシンボリが出走し、14着に敗れた。
+1999年、ジャパンC馬のエルコンドルパサーが出走し、2着。
+2002年、天皇賞馬のマンハッタンカフェが出走したが、直線で失速し13着と敗退。レース後に、左前脚に屈腱炎の兆候が判明。検査を前に即引退となった。
+2004年、タップダンスシチーは当初遠征を予定していたが輸送手順の不慮により一度は断念を表明したものの、ファンからの強い要望もあって日程を再調整し参戦、17着に敗れた。
+2006年、クラシック三冠馬のディープインパクトが出走し、3位入線したが、禁止薬物に関する違反により失格となった。
+2010年、宝塚記念馬のナカヤマフェスタが出走し、2着。同レースにはヴィクトワールピサも出走していたが、7着だった。
+2012年、クラシック三冠馬のオルフェーヴルが出走し、2着。
+2013年、オルフェーヴル、ダービー馬のキズナが出走し、2着・4着。
+2014年、ハープスター、ジャスタウェイ、ゴールドシップが出走し、6着・8着・14着。
+2016年、日本ダービー馬のマカヒキが出走し、14着。
+2017年、サトノダイヤモンド、サトノノブレスが出走し、15着・16着。
+2019年、キセキ、ブラストワンピース、フィエールマンが出走し、7着・11着・12着。
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***予定はあったが参戦しなかった日本調教馬 [#y3fa20e3]
-1985年、前年のクラシック三冠を制したシンボリルドルフは凱旋門賞出走などを視野に入れた海外遠征を予定していたが、国内でのステップレースとして出走を予定していた宝塚記念の直前に、芝面不備が原因とされる転倒事故を起こし左肩跛行を発症。宝塚記念への出走を取り止め、同年の海外遠征も中止となった。
-1997年、サクラローレルは凱旋門賞出走を目指し渡欧したが、前走としたフォワ賞後に右前脚屈腱不全断裂が判明。出走を断念し現地で引退となった。
-2002年、ジャングルポケットは凱旋門賞挑戦も視野に入れた海外遠征を予定していたが、宝塚記念に向けた調教中に脚部不安を発症したため、宝塚記念出走・海外遠征ともに中止となった。
-2007年、東京優駿(日本ダービー)を制したウオッカは凱旋門賞へ出走の意向を示したが、宝塚記念後栗東トレーニングセンターで調整中、右後脚に蹄球炎を発症、調教に遅れが生じたため遠征中止が発表された。
-2010年、エイシンフラッシュは凱旋門賞に一次登録を行っていたが、後に断念した。
-2011年、ヴィクトワールピサは前年に引き続き出走を予定していたが、レースに向けた調教後に左後肢の跛行が生じ、また左飛節に炎症があることがわかり、5週間程度の安静が必要との診断を受けたことから出走を取りやめた。
-2017年、キタサンブラックは凱旋門賞への出走を予定していたが、宝塚記念での9着惨敗の結果を受け、予定を取り止めた。