デヴィルズバッグ

Last-modified: Thu, 06 Apr 2023 17:26:16 JST (357d)
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タイキシャトルの父

デヴィルズバッグ(Devil's Bag)は1981年生まれのアメリカ合衆国のサラブレッドの競走馬、および種牡馬。

父はサンデーサイレンスなどを輩出したヘイロー(Halo)、母はバラッド(Ballade)との間に生まれた馬で、全姉に1980年エクリプス賞最優秀古馬牝馬グローリアスソング(Glorious Song)、全弟に2005年度北米リーディングサイアーのセイントバラード(Saint Ballado)などがいる。

グローリアスソングの産駒であるシングスピール(Singspiel)は1996年度ジャパンカップで優勝。セイントバラードの産駒には2005年度エクリプス賞年度代表馬、最優秀古牡馬であるセイントリアム(Saint Liam)や2004年度エクリプス賞最優秀3歳牝馬、2005年度同最優秀古牝馬であるアシェイド(Ashado)などがおり、良血の一族として名を馳せた。

「Devil's Bag」という名は、ワシントンアーヴィングの短編小説「スリーピーホロウの伝説(The Legend of Sleepy Hollow)」で言及されている魔法の袋を暗示していると言われている。

 
 
 

競走実績

2歳時は冬頃からフロリダ州で長らく調教を重ね、初戦として迎えた8月20日の未勝利戦(サラトガ競馬場・ダート6ハロン)、9頭立てで行われたこの競走において、デヴィルズバッグは後続を7馬身半も突き放す圧勝で初勝利を挙げた。

2戦目の一般競走(ベルモントパーク競馬場・ダート6ハロン)では5馬身1/4差の勝利、また3戦目のカウディンステークス(G2・ベルモントパーク・ダート7ハロン)で記録した1分21秒40のタイムは当時のベルモントパークのダート7ハロン(約1408メートル)でのトラックレコードおよびニューヨーク州の当時の2歳馬のダート7ハロンのトラックレコードを更新、さらに翌戦シャンペンステークス(G1・ベルモントパーク・ダート8ハロン)では1976年にシアトルスルーが記録していた同競馬場ダート8ハロンのトラックレコードを塗り替えた。

同年最終戦のローレルフューチュリティにおいてもローレルパーク競馬場ダート8.5ハロンで1分42秒20のタイムを叩きだし、スペクタキュラービッドの保持していたトラックレコードを塗り替えた。負け知らずの5連勝、全競走で27馬身、平均して5馬身半の差を付けており、その世代において圧倒的な力を持っていることを示し続けた。

その後12月20日、クレイボーンファーム総帥のセス・ハンコックはデヴィルズバッグに対する、1株100万ドル、合計3600万ドルの種牡馬シンジケートを結成したことを発表した。

この金額は2歳馬にかけられたものとしては史上最高額のもので、アメリカの全競走馬においても歴代3位という大規模なものであった。また、ハンコックは同馬を3歳シーズン終了後にクレイボーンファームへと引退させる予定を語り、種付け初年度(1985年)の種付け料を100万ドルにするとも宣言した。

後にエクリプス賞表彰において、デヴィルズバッグは1983年の最優秀2歳牡馬に選出、またメリーランド州競馬協会の年度代表馬、最優秀2歳牡馬などに選ばれた。この時点でデヴィルズバッグの評価は最大級のものになっており、1973年に25年ぶりに三冠馬となった「セクレタリアト以来最高の2歳馬」「セクレタリアトの再来」などとの評価を得て、アメリカクラシック三冠も確実視されていた。

 

1984年はフロリダで行われる3歳戦から始動し、2月20日のハイアリアパーク競馬場で行われたフラミンゴプレップステークス(ダート7ハロン)において7馬身差の圧勝で年初を飾った。

翌戦にフロリダ路線における最大の前哨戦である3月3日のフラミンゴステークス(G1・ハイアリアパーク・ダート9ハロン)に出走、32,240人の観衆が詰めかける中で断然の1番人気に推されたが、超ハイペースのなか強引に前に行く競馬が祟ってずるずると後退、勝ち馬タイムフォーアチェンジから7馬身差の4着に沈み、初の敗北を喫してしまった。鞍上を務めたエディ・メイプルは「何が起こったのかわからない」と語り、またスポーツ・イラストレイテッド誌の記者ウィリアム・ナックは3月12日の同誌において「近年の競馬における、1973年のセクレタリアトのそれ以来の衝撃的な事件であった」と評している。

 

初の敗戦後、デヴィルズバッグはアケダクト競馬場のゴーサムステークスに登録していたが、馬場状態の悪さを理由にこれを回避、その先4月19日のキーンランド競馬場で行われたフォアランナーパース(ダート7ハロン)に出走してこれを15馬身差で圧勝、依然として力のあるところを見せつけた。

さらに、4月28日のチャーチルダウンズ競馬場のダービートライアルステークス(ダート8ハロン)でも2着馬ビロクシインディアンに2馬身1/4差をつけて快勝している。

 

しかし、ケンタッキーダービーを4日後に控えた5月1日にスティーヴンスはダービーの回避を発表し、プリークネスステークスより本戦に加わるとした。ダービーには同厩舎のスウェイル(Swale)が参戦し、これに勝利している。その後、デヴィルズバッグの右前脚の膝に亀裂が入っていることが発見され、これによってクラシック出走を目前としながら引退が決定した。

 

引退後

引退後は予定通りクレイボーンファームでの種牡馬となり、生涯で45頭以上のステークス競走勝ち馬を輩出した。コンスタントに良績を残したものの、大きすぎる期待にそぐうほどのものを出すことはなかった。

アメリカ国内における代表産駒として名の挙がる馬にデヴィルヒズデュー(Devil His Due 1989年生、牡馬)がおり、サバーバンハンデキャップやガルフストリームパークハンデキャップなどハンデキャップ競走路線で活躍、G1競走4勝を挙げた。

 

国外での活躍馬の代表として、日本で競走馬となったタイキシャトル(1994年生、牡馬)がいる。同馬は日本国内でマイルチャンピオンシップ連覇などの実績を重ね、さらにフランスに遠征してジャック・ル・マロワ賞に優勝、1998年の年度代表馬に選出された。

このほかでは、アイルランドとアメリカの2か国で競走生活を送ったトワイライトアジェンダ(Twilight Agenda 1986年生、牡馬)、サンタモニカハンデキャップなどに勝ったデヴィルズオーキッド(Devil's Orchid 1987年生、牝馬)、ガゼルハンデキャップなどに優勝したバイザスポーツ(Buy the Sport 2000年生、牝馬)などがいる。

 

後継の種牡馬も多く、その血統は現在も各地に広まっている。前述のデヴィルヒズデューやタイキシャトルのほか、戦績こそG2勝ちどまりながら種牡馬として重賞勝ち馬を輩出したディアブロ(Diablo 1987年生、牡馬)などもいる。

2005年2月3日の早朝にデヴィルズバッグは馬房内で右後脚を骨折、このため安楽死の処置がとられた。24歳であった。遺骸は牧場内のマーチモント墓地に埋葬された。

 

開催時期は定かではないが、ローレルパーク競馬場にて同馬の名を冠した「デヴィルズバッグステークス」が開催されるなど、特にメリーランド州では大いに人気を博した。

 

血統関係

調べられる限りのGⅠ勝利産駒を記載。

 

バラード(Ballade 牝 1972 父:エルバジェ(Herbager))

デヴィルズバッグ(Devil's Bag 牡 1981 父:ヘイロー(Halo))

 ├トワイライトアジェンダ(Twilight Agenda 牡 1986 母:グレンゼン(Grenzen))

 ├デヴィルズオーキッド(Devil's Orchid 牝 1987 母:キャストザダイ(Cast the Die))

 ├ボニータフランシータ(Bonita Francita 牝 1987 母:レイズザスタンダード(Raise the Standard))

 │└オルペン(Orpen 牡 1996 父:ルアー(Lure))

 │ └マルペンサ(Malpensa 牝 2006 母:マルセラ(Marsella))

 │  └サトノダイヤモンド(牡 2013 父:ディープインパクト)

 ├デヴィルヒズデュー(Devil His Due 牡 1989 母:プレンティオトゥール(Plenty O'Toole))

 ├デヴィルズディスピュート(Devil's Dispute 牝 1989 母:インペチュィスギャル(Impetuous Gal))

 │└デイジーディヴァイン(Daisy Devine 牝 2008 父:カフワイン(Kafwain))

 ├ラッフルズバッグ(Raffle's Bag 牝 1989 母:イグノー(Ignore))

 │└バイロ(Bilo 騸 2000 父:ベルトランド(Bertrando))

 ├エンチャンテッドスペル(Enchanted Spell 牝 1991 母:デイムミステリウス(Dame Mysterieuse))

 │└エルブルージョ(El Brujo 騸 2006 父:キャンディライド(Candy Ride))

 ├タイキシャトル(牡 1994 母:ウェルシュマフィン(Welsh Muffin))

 │├ウインクリューガー(牡 2000 母:インヴァイト)

 │├ダイワエンジェル(牝 2000 母:プリンセススキー)

 │└レーヌミノル(牝 2014 父:ダイワメジャー)

 │├メイショウボーラー(牡 2001 母:ナイスレイズ)

 │├ネヴァーピリオド(牝 2002 母:フューチャハッピー)

 │└ストレイトガール(牝 2009 父:フジキセキ)

 ├ヴァーチュ(牝 2002 母:サンタムール)

 │└ワンアンドオンリー(牡 2011 父:ハーツクライ)

 │└サマーウインド(牡 2005 母:シンウインド)

 ├ミスリヴィ(Miss Livi 牝 1994 母:カンティクル(Canticle))

 │└バルトスター(Balto Star 騸 1998 父:グリッターマン(Glitterman))

 ├デヴィルズプライド(Devil's Pride 牡 1995 母:ラストロスキャンディ(Lustrous Candy))

 ├レランシーナ(Relancina 牝 1999 母:ディフェンススペンディング(Defense Spending))

 │└ファヘドジュニア(Fahed Jr. 牡 2007 父:アプレンティス(Apprentice))

 バイザスポーツ(Buy the Sport 牝 2000 母:ファイナルアコード(Final Accord))