絆クエスト
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| | 絆レベルを5にすると開放 (+クリックで展開)
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『砕けよ黄金の枷鎖、黄金の恥辱』
ランク:A+ 種別:克己宝具
レンジ:0 最大捕捉:─
オーセンティック・トライアンフ。
これは彼女が今の自分自身に対し、心から「理想の女王であると証明できた」あるいは「その戦いにより証明できる」と確認したときにのみ真名解放が可能な宝具である。少しでも迷いがあると発動できない。
自らの持つすべての魔力、精神力、意志力、決意、怒り、矜持などを注ぎ込むことにより、サーヴァントとしての霊基に深く結びついている黄金の枷、黄金の鎖を粉砕し、「自らが望むif」の姿───「ローマ皇帝アウレリアヌスに与えられた敗北と恥辱を振り払い、ローマから勝利を掴んだ東方の女王」の姿に変貌する。
それは物理的な肉体の解放というだけでなく、不完全であった過去のゼノビアの精神性からの脱却。
言わば「怯懦に濡れ、命乞いをしたかもしれなかった、理想形ではないゼノビア」の可能性を影法師であるサーヴァントの側から否定したことであり、自らの存在自体を一時的に塗り替える概念置換に等しい。
この宝具の真名解放が為された場合、ゼノビアの全ステータスが驚異的に向上する。
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ゲームにおいて
- ゲーム内での運用に関するコメント
- ☆4アーチャー。
2021年10月20日に「ハロウィン・ライジング! ~砂塵の女王と暗黒の使徒~」開催に合わせて恒常実装。
- 2022年5月のリニューアルにより、ゲーム開始時の☆4サーヴァント確定チュートリアル11連ガチャで当たる内の一騎に選ばれている。
- カード構成はBQQAA。性能は4hitするArtsは二枚持ちでは高い部類だが、3hitするQuickは並み程度。
スキル解説
- スキルに関する記述
- 自己強化メイン。ある程度のサポート力も持つ。
- 「僭称のアウグスタ B」
自身のArtsカード性能アップ(3T)&毎ターンNP増加付与(3T)&毎ターンスター獲得付与(3T)
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| | スキル倍率
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毎ターンNP獲得 | +10% | +11% | +12% | +13% | +14% |
毎ターンNP獲得 | +15% | +16% | +17% | +18% | +20% |
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- Arts強化の性能は高め。毎ターンのNP増加量が最大20と多く、スターも最大10個と少なくはない。
- 自身の宝具、パーティ全体でのスター、どちらの運用にも貢献するがCTが長めなのでフォローしたい。
- 「アウレリアヌスの攻囲(抗) A」
自身にガッツ付与(1回・3T)&スター集中付与(1T)+スター獲得
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| | スキル倍率
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ガッツ | +1,000 | +1,200 | +1,400 | +1,600 | +1,800 |
スター獲得 | +10個 | +11個 | +12個 | +13個 | +14個 |
ガッツ | +2,000 | +2,200 | +2,400 | +2,600 | +3,000 |
スター獲得 | +15個 | +16個 | +17個 | +18個 | +20個 |
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- ガッツ後HPは最大3000と多めだが、ガッツそのものが3ターンしか持続しない点に注意。
- スター集中に加えてスター最大20個獲得によりクリティカルを狙いやすい。
- 注意点として、元々高いアーチャークラスのスター集中度をさらに高めてしまうので、スター供給役としては使いにくい。宝具に付くクリティカル威力アップバフを活かすために宝具後に使うか、スターにまつわる味方のサポートが欲しい。
- 「栄行くパルミラ A」
味方全体の攻撃力アップ(3T)&被クリティカル発生耐性アップ(3T)
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| | スキル倍率
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被クリティカル発生耐性 | 20% | 21% | 22% | 23% | 24% |
被クリティカル発生耐性 | 25% | 26% | 27% | 28% | 30% |
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- カリスマ複合スキル。全体の攻撃力増加に加えて被クリティカル発生耐性が増す。
- 被クリティカル発生耐性アップによりクリティカルを受ける頻度が大きく減少する為、防御手段の一つとして有用。
宝具解説
- 宝具に関する記述
- 「砕けよ黄金の枷鎖、黄金の恥辱」
自身の攻撃力アップ(1T)&クリティカル威力アップ(3T)+Arts属性全体〔王〕特攻攻撃
- 事前の攻撃力アップ値は低めだが「僭称のアウグスタ」と「栄行くパルミラ」が乗るので火力は十分。さらに〔王〕相手には特攻により火力が増大する。クラス有利を突けるセイバー・バーサーカーには〔王〕属性持ちが比較的多い。詳しくは不夜城のキャスターを参照。
- 付与されるクリティカル威力アップは性能が良く、OC対応。この効果と自身のスキル群によりクリティカル運用する点は鈴鹿御前やカイニスに近しい。
- 全体4hitするArts宝具なのである程度のリチャージに期待でき、相手次第だがシステム運用可能。
総評
- 総合評価に関する記述
- 適切な編成を組むことで真価を発揮するアタッカー。速攻戦法/周回で強みがわかりやすいタイプ。
- 攻撃面は、狭い範囲ながら特攻付き全体宝具、Artsと攻撃バフ、スター獲得二種、スター集中、クリティカル威力アップを一通り揃え、宝具アタッカーもクリティカルアタッカーもこなせる。毎ターンNP増加スキルとArts宝具のNP回収によって、編成次第で宝具三連射の周回システム可能。
- 周回システムを組めるArts宝具アーチャーとしては水着ジャンヌに続く二騎目で依然希少な性能。
- 宝具に3ターンクリティカル威力アップ効果が付いているため、宝具三連射後のクリティカル追撃威力は圧巻。
- 防御面はガッツと被クリティカル耐性だけで、どちらも複合スキル故に使用タイミングがやや判断し辛く、攻勢に出ると防御の隙が発生しやすい。長期戦にはフォローが欲しい。
- 最大の欠点はスキル1と2のCTが長く回転率は良くないこと。できるだけ短期戦を決めないと攻防の隙は数ターン続く。
- 編成パートナーは、アーツサポーターの最高峰キャストリアと玉藻、低レアで召喚しやすいパラケルススが定番。周回や短期戦で瞬間火力を出すには不可欠であり、長期戦にも対応する。前二者は人気サポーター故に未所持でもフレンドから借りやすく、自前のパラケルススさえ育てば周回編成は組みやすい。
- 恒常星4のエレナや蘭陵王とも好相性。蘭陵王は防御面も補強できる。
- クリティカルアタッカー運用では、耐久アーツクリティカルパーティの定番サポーターである孔明、ジャンヌ・ダルク、低レアではマシュとアンデルセンがお勧め。スキルや宝具に防御補強、スター出し、攻撃やクリティカルバフなどを揃えるサポーターが理想的。
- 同クラス編成では、攻撃補正と強敵狙撃のケイローン、攻撃バフと全体回避と回復スキルを持つダビデ、味方へのバフはないがA三枚でスターを大量出せるエミヤ、配布サポーターのナイチンゲール(サンタ)など。
- スキル育成優先順は、周回での使いやすさに直結するスキル1が最優先。Lv9-10にすれば報酬増加礼装6積みの周回が可能になる。次に火力が増えるスキル3。スキル2は長期戦での再使用を考えない限り、レベルアップの影響は少なく、育成を後回しにしても運用に支障はない。
概念礼装について
- 礼装に関する記述
- 周回システム運用では、恒常入手できる「毒蛇一芸」がおすすめ。三ターン内に宝具の火力とNP回収率を増やせるため、周回の安定性がかなり改善される。
- 長期戦アタッカー運用では、アーツ性能アップの「フォーマルクラフト」、クリティカル性能を増強する「もう一つの結末」、「宝石魔術・対影」、「スイーパー」など恒常でも選択肢が多い。
性能比較
サーヴァント性能比較表
名前 | HP | ATK | Q | A | B | 宝具 | 保有スキル |
---|
1 | 2 | 3 |
---|
サーヴァント1 | ----- | ----- | - | - | - | ?/単 | skill1[rank] | skill2[rank] | skill3[rank] | サーヴァント2 | ----- | ----- | - | - | - | ?/単 | skill1[rank] | skill2[rank] | skill3[rank] | サーヴァント3 | ----- | ----- | - | - | - | ?/単 | skill1[rank] | skill2[rank] | skill3[rank] |
- 関連サーヴァント比較
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No. | 名前 | Lv.M | HP | ATK | 筋力 | 耐久 | 敏捷 | 魔力 | 幸運 | 宝具 | Q | A | B | 保有スキル |
---|
--- | サーヴァント1 | Lv | ----- | ----- | A | B | C | E | E | A | 1 | 2 | 2 | skill1[rank] skill2[rank2] skill3[rank] | --- | サーヴァント2 | Lv | ----- | ----- | A | B | C | E | E | A | 1 | 2 | 2 | skill1[rank] skill2[rank2] skill3[rank] | --- | サーヴァント3 | Lv | ----- | ----- | A | B | C | E | E | A | 1 | 2 | 2 | skill1[rank] skill2[rank2] skill3[rank] |
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#includex(): Page サーヴァント性能比較表 is already included.
小ネタ
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- 史実
- ゲーム外の説明
- 現在のシリアにあるパルミラを首都とし、一時はエジプトまでを版図におさめ、後にローマ皇帝アウレリアヌスに破られたパルミラ帝国の女王。アラビア半島に住まうベニサマヤド部族のお姫様で、西暦240年頃に生まれたと言われる。
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- パルミラ語での名はバト・ザッバイで、これは「ザッバイの娘」を意味する語。
ザッバイを当時のパルミラにおける第二言語であるギリシャ語で表記するとゼノビオスとなり、その女性形がゼノビアである。ゼノビアにはまた「ゼウスに由来する生ある者」という意味もあるとされる。
パルミラからは「アンティオコスの娘、セプティミア・バト・ザッバイ」という碑文も見つかっているが、当時のローマの慣習に沿うならばゼノビアの父の名前はセプティミウス(女子の場合は父の名から名前を取るため)となり、アンティオコスの娘という表記とは繋がらない。一説には箔付けのためにセレウコス朝シリアのアンティオコス王が自分の祖先であると示したものではないかとも言われるが、アンティオコスという名の父が死去した後にセプティミウスが娘として引き取ったのではとも推測する学者もおり真相は不明。
当時のパルミラはアラム人系列とアラブ人系列の混合社会であり、ゼノビアもまた双方の血を引いていたと推測されている。マニ教の資料からは「パルミラの女王の姉妹ナフシャ」という名が見られるが、ゼノビアに姉妹がいた可能性は低く、このナフシャという女性がゼノビア自身を指すのではないかという指摘もある。
一部のアラブ人歴史家はゼノビアをシバの女王の存在とも結び付けたが、創作度合いが甚しく信憑性は低い。
- 母はギリシア人ともエジプト人とも伝わっており、ゼノビア本人も数カ国語を流暢に操り著述も行い、哲学にも造詣が深い才女であったという。
- 『ローマ帝国衰亡史』を著した18世紀イギリスの歴史家エドワード・ギボン曰く、「褐色の肌、異常な輝きを持つ大きな黒い目、力強く響きのある声、男勝りの理解力と学識をもち、女性の中ではもっとも愛らしく、もっとも英傑的...…彼女は、オリエントで最も気高く最も美しい女王であった 」とのこと。
また「美においてはクレオパトラに勝るとも劣らず、貞潔と勇気においてはるかにクレオパトラを凌駕した」とも記している。
- ただしこの書籍では、後述する命乞いについては盛大に酷評している。現在のゼノビアの評価を、良くも悪くも決定づけた書籍の一つと言えるだろう。
- ゼノビアが生きた時代の文献資料は後述する事情もあって現存するものが極端に少なく、彼女の人生についてはその多くを後代の歴史学者の残した記述とコインなどの考古資料に頼らざるを得ない。
文書の一つである『ローマ皇帝群像』は複数の古代の歴史家が書いた著作の断片を中世になってから加筆再編纂したもので、2世紀から3世紀末にかけての帝政史を体系的に扱ったほぼ唯一の資料だが、後代に付け加えられたと思しきいい加減なエピソードも多いため、全体としては信用できる箇所とできない箇所の乖離が激しい。しかしゼノビア個人の逸話については他の資料から裏付けが取れているところも少なくなく、また12世紀の東ローマ帝国の著述家であるヨハンネス・ゾナラスが古代の記録を元に著した『エピトメ・ヒストリアールム(歴史抄本)』もゼノビアについて取り扱っており、こちらも重要かつ信頼性があるとされる。
- パルミラはイスカンダルの時代以前からある中近東の重要な都市で、ローマ帝国第2代皇帝ティベリウスの治世下、紀元1世紀に帝国のシリア属州に組み込まれてからはローマ帝国とペルシア、インド、中国を結ぶ交易路の中継地として栄えた。
- 語感が似ているため混同されやすいが、パルミラとパルティアは互いに関係ない全くの別物である。
パルティアはアルサケス朝ペルシアという別名の通りペルシア、すなわちイランを中心に栄えた大国で、パルティアンショットなどの戦術を駆使する強力な騎兵を武器にローマ帝国と長年凌ぎを削った。
一方パルミラは前述の通りシリアの一都市で、パルティアの建国以前から続く古い街である。
- パルミラは古代から栄えた都市でその遺跡は世界遺産にも指定されているが、2015年から続くシリア内戦のなかでイスラム原理主義組織「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」による破壊を受けてしまった。
- しかし3世紀に近隣の国際環境の変化とローマ内部の混乱が重なり、パルミラもその渦中に巻き込まれることになる。
まず東方でローマと覇を競ったパルティアが衰退し、新たにササン朝ペルシアが台頭。259年には親征した皇帝ウァレリアヌス本人が戦場で敗北し捕虜にされる事態まで引き起こすほどローマを圧迫した。
一方でローマ帝国内も235年のアレクサンデル・セウェルス帝暗殺以降、有力な将軍たちが軍部の支持を背景に皇帝位を奪い合う(軍に推戴され無理矢理皇帝にさせられたケースも少なくなかったが)「軍人皇帝時代」に突入し混乱を極めていた。北方からの絶え間ない蛮族の侵入がこの傾向に拍車を掛け、さらに先述のウァレリアヌス捕縛により皇帝の権威が失墜。260年には20人以上もの皇帝僭称者が現れ、帝国西方のガリア・ヒスパニア・ブリタニア属州に至っては「ガリア帝国」を名乗って独立を宣言する事態にまで発展した。
- マイルームボイスでウァレリアヌス帝がゼノビアに「弱い」と評されているのはこの虜囚事件(エデッサの戦い)とその際のローマ軍の歴史的大敗が原因である。敗戦だけならまだしもローマ皇帝が捕虜となるのは前代未聞の出来事で、ローマの威信を失墜させるばかりかその国力低下を誰の目にも明らかにするものだった。これは属州での反乱やゲルマン人などの異民族の侵入をさらに勢いづけ、後任の皇帝たちをも苦しめることになった。
- 東方のシリアでも軍人の反乱によりローマ帝国の支配能力が低下する中、頭角を現したのが当時パルミラを根拠地としていたセプティミウス・オダエナトゥスだった。シリア一帯に大きな影響力を持ち、事実上のローマ東方属州の統括者となっていたオダエナトゥスは私兵団を編成すると、ウァレリアヌスの息子で共同皇帝の座についていたガリエヌスの正式即位への全面的な支援を宣言。皇帝僭称者の一人を攻め滅ぼすと、さらにはウァレリアヌス帝の仇討ちを謳ってササン朝の軍隊をも独断で攻撃、ササン朝に奪われていたカルラエ・ニスビスの両都市を奪回した上に首都クテシフォンにまで侵攻し圧力を掛けるという活躍を見せた。この大きな功績により、帝位についたガリエヌスから信頼を得たオダエナトゥスは正式に「東方総督」の地位を下賜されることとなる。
また、勢力伸長に合わせるようにオダエナトゥス自身がアケメネス朝ペルシアから続く由緒ある中近東・小アシア一帯の王権の称号(つまりローマ皇帝という地位とは競合しない)である「諸王の王」を名乗ったこともあって東方属州は半独立状態となり、独自の勢力圏へと変化した。オダエナトゥス本人はそうした状態でも一貫してガリエヌス帝の協力者かつ臣下という立場を(少なくとも表面的には)崩さなかったものの、267年にアナトリア地方に進出してきたゲルマン民族(ゴート族としてローマでは一纏めにされていたが、実際には造船能力に長けたヘルリ族であったと推測される)に対処すべく出兵した直後、長子ヘロディアヌスともども暗殺されてしまう。
跡を継いでパルミラ、ひいては東方一帯を支配したのが、258年から彼の後妻となっていたゼノビアと幼い息子ウァバッラトゥスだった。
- ゼノビア自身騎馬を得意とするなど元からかなり行動的で、遠征に軍装で同行し智略に優れることでオダエナトゥスの信頼も篤かったようだ。一方で、オダエナトゥスとその先妻の子が一度に暗殺された背景には、自らの子に王位を与えて自身で権勢を握ろうとしたゼノビアの暗躍があったのではと見る研究者もいる。
- マイルームボイスで「愚か」と非難されているこのガリエヌス帝はウァレリアヌスのやらかしの後始末を押しつけられる形になってしまい事態収束に奔走(オダエナトゥスの重用もその一環)したのだが、結局東ではゼノビアによるパルミラの自立を招き、西では息子を殺害された上にガリア属州に離反され、そこに北方ゲルマン人の侵入が加わる三重苦のなか奮闘実らず268年にクーデターで暗殺されてしまったという、かなり可哀想な人である。
- 雨後の筍のように皇帝が乱立した軍人皇帝時代において、多方面からの危機に晒されながら帝国維持のため働き続け、放蕩に走ることもなく曲がりなりにも15年(共同皇帝時代含む)統治したガリエヌスを愚かと切って捨てることが出来るかどうかは難しい問題である。ただし彼の政策の多くは結果的に裏目に出たばかりか、一部は後世にまで禍根を残した(ゲルマニア防壁の放棄など)ため、同時代人であるゼノビアからそう評価されてしまうのは無理からぬものかもしれない。
- ゼノビアは王である息子の摂政という形をとりつつ、実際にはパルミラの全権を握った。彼女はローマ皇帝の怒りを買わぬよう慎重に振る舞いながら、ローマの迷走を尻目に半ば独立国となったパルミラの覇権拡大を図っていった。270年以後はアラビア属州の首都を攻撃して属州総督を殺害、さらにパレスチナを制圧しつつエジプト属州にまでなだれ込み、全土を征服した。さらに小アジアにも進軍してカッパドキアやアンカラを征服し、パルミラ帝国の最大領域を現出させた。
ゼノビアはこうした戦績から「戦士女王」と呼ばれ、一方自らはエジプトの女王を称し、セミラミスやクレオパトラの後継者をも名乗った。
- ローマの属州を攻撃するばかりか皇帝が直接統治するエジプトにすら侵攻するとなるとやりたい放題にしか見えないかもしれない。しかし「ササン朝ペルシアからローマの属州を守る」という一応の名目があったし、当時の皇帝アウレリアヌスはゲルマン人などとの戦いに追われており、形だけだとしても臣従を示しているパルミラの問題は優先度が一段低かった。またエジプトはローマ帝国の穀倉地帯であり、パルミラに寛容を示して食料供給を安定させることの方が重要だったのである。
- ゼノビアによるパルミラ帝国の征服活動はこのような微妙なバランスの上に許容されていた。
- ゼノビアもこの点でバランスをうまくとっており、鋳造するコインには息子の像を描きつつアウレリアヌス帝の名前も並べて記していた。しかし271年以後、彼女は息子に皇帝(アウグストゥス)を、自らは皇妃(アウグスタ)を名乗り始め、翌年にはこれを記念したコインをも鋳造した(そして目下のところ、このコインが唯一彼女の姿を今に伝えている)。
さらにゼノビアにとっては折悪しく、ちょうど同年にアウレリアヌスはゲルマン人に対して三度の戦いの末に決定的勝利を収め、防衛に不向きなダキア属州の放棄・割譲によりゴート族の問題も一応片付けることに成功。異民族の侵入という難題から解放された皇帝はパルミラ帝国に対して本腰を入れられるようになった。
ことここに至ってパルミラの増長を看過できなくなったアウレリアヌスは降伏勧告を行ったもののゼノビアはこれを拒絶、パルミラはローマの敵と化した。
- アウレリアヌスは272年に自ら軍を率い、ボスポラス海峡を渡って小アジア側からパルミラ帝国を攻撃した。ゼノビアは自ら前線に立って兵を鼓舞したが強壮なローマ軍には敵わず、二度に亘った決戦の両方で敗走、パルミラに籠城した。パルミラの守備隊が数回にわたるローマ軍の突入を防ぎ切るなど奮闘したことにくわえ、ローマ側の兵站線が伸び切ってしまった上にアラビアの遊牧民族による襲撃などに悩まされたこともあって、このパルミラ包囲は比較的長引いた。
パルミラ側の手痛い反撃に手を焼いたアウレリアヌスは、都市の財は全て接収するがローマへの移住を条件にゼノビアと家族の助命およびパルミラ市民を丁重に取り扱うことは約束する、と書面を送って降伏を促したものの、ゼノビアは返書でこれを拒否。未だ西側にガリア帝国の問題を抱えていたアウレリアヌスが東方への親征を長引かせることは困難という弱点も承知していたゼノビアは、長期戦に持ち込むことでササン朝ペルシアや周辺諸国の介入を呼び込み状況の逆転を狙っていたとも言われる。
しかし結局ゼノビアの下に援軍が到着することはなく、半年余りの籠城戦の末、パルミラ帝国からエジプトを奪回したアウレリアヌスの部下が合流したことで最終的にパルミラは陥落する。
- 脱出したゼノビアはササン朝ペルシアへと逃走を図ったもののアウレリアヌスの追撃を受け、ユーフラテス川を越えぬうちに捕らえられた。弁明の場では全ての責任を部下に押し付け命乞いに徹したとされている。結果ゼノビアは助命されたが、部下の将兵は全員処刑された。
ここにパルミラ帝国は崩壊し、パルミラの都市自体もその後衰退の一途を辿ることになる。
- 自身に敵対姿勢を見せた者は容赦無く処断してきたアウレリアヌスだったが、パルミラについては戦後に武装解除し街の防衛設備も取り壊したものの都市そのものは残し部隊を駐留させるにとどめた。先述の降伏勧告の手紙内容と考え合わせると、ゼノビアとアウレリアヌスの間で何らかの取引があった可能性もある。
しかし翌273年にパルミラはゼノビアの親族(息子という説もある)セプティミウス・アンティオクスを擁立してまたも反乱を起こしたため、アウレリアヌスは再びパルミラを制圧。二度目の慈悲が与えられることはなくパルミラは徹底的に破壊され廃墟と化し、以後ほとんど住む者はなく現在のような遺跡となった。ゼノビアに関するパルミラ側の公文書や記録も、その殆どがこの時点で消失したと推測される。
- アウレリアヌスは返す刀で西方のガリア帝国も下し、帝国の再統一を果たして274年にローマに凱旋した。ゼノビアと息子ウァバッラトゥスはその際の凱旋式において黄金の鎖で縛られ、ガリア帝国皇帝のテトリクス1世ともどもローマ市内を引き回されて市民の見世物にされたという。
その際には彼女の美貌を損なわないように、凱旋式の日まで食事、美容、健康面などにおいて細心の注意が払われたとも。
- ゼノビアの最期については諸説あり、パルミラがローマ軍によって完全に破壊されたのを知ると何日も食を絶って自決したとも、ローマまでの連行中に息子ともども病死した(6世紀初頭のゾシモスによる記載のみ)とも、凱旋式の後に首を斬られて死んだ(6世紀のマララスによる記載のみ)とも伝えられはっきりしない。
一方『ローマ皇帝群像』には「ローマ市民の同情を買い特赦の恩典に浴することとなり、アウレリアヌス帝からティヴォリのヴィラ・ハドリアーナ近辺に屋敷を与えられて子供達と余生を送った」と記され、8世紀末頃の東ローマ帝国の歴史家シュンケロスは「元老院議員と再婚した」としている。先述した著述家ゾナラスも「上流階級の男性と再婚し、幾人かの娘を授かった」と記述を残している。
真実は歴史の闇の中だが、少なくとも274年の凱旋式には連れ出されていた筈であり、おそらくその後も命を長らえたというのが古代から現代までの多くの学者の共通見解となっている。
ゼノビアの元の夫であるオダエナトゥスの姓を冠したローマ人の墓碑が発見されていることや、10年以上に亘りローマ帝国を悩ませたガリア帝国元皇帝のテトリクスが凱旋式が終わった後にはルカニア総督として厚遇され天寿を全う(共同皇帝だった息子のテトリクス2世も元老院議員職を与えられた)している事実などもあるため、ゼノビアも実際に寛大な処遇で済んだ可能性はある。
- サーヴァントとしてのゼノビアは、引き回し以降の記憶がはっきりしておらず、その後に裁きの場で命乞いしたかどうか、ローマ市民として生き永らえたかどうかは覚えていない、と言う設定になっている。……のだが上記の通り、部下に責任を押し付けて命乞いしたのは、この引き回しの前である。「記録では○○だが実際は××」と言う設定はFateシリーズでは珍しくないが、プロフィールを見る限り、彼女の場合は「(記憶や事実ではなく)記録そのものが何の説明もなく改変されている」と言うかなり珍しいパターン。そのせいで、「ローマまで護送されて、引き回しされて(この時点で捕らえられた翌年になっている)、その後にようやく申し開きで命乞い、その段階で今更になって許されたし部下は処刑」と言う、非常に不自然な記録と言う事になってしまっているが……。
- ただ、本来の記録通り命乞いを引き回しの前とすると、「命乞いしたかどうかは覚えている」もしくは「引き回しの事を覚えていない」となってしまう。サーヴァントとしての設定の魅力を保つためには、多少の不自然もやむを得ない……と言う所だろうか。
ただのミスである可能性も否定できないが
- ちなみにアウレリアヌスは戦地からの書簡で「ローマ人は『一女性と戦っているだけ』と言うが、ゼノビアの性格と実力を知らないのだ」と述べており、統治者としてのゼノビアを高く評価していたことが現在にも伝わっている。
- 西で帝国に反旗を翻した異民族とガリア帝国を征伐し、東ではパルミラを討ったことで三分された帝国を再統合したアウレリアヌスはその功績を讃えられ「世界の修復者」の称号を得た。
- 交易都市という特性上パルミラには多種多様な民族・思想・宗教が混在していた。そうした環境下に生活していたゼノビアもまた文化の多様性には寛容であり、同時にそれを利用する術にも長けていた。シリアの君主、ヘレニズムの女王、ローマの皇后など、それぞれの文化圏の民衆が望む姿で振る舞い幅広く支持を得ていったことがパルミラを帝国にまで押し上げる上で大きな役割を果たしたと推測されている。
また、自身も教養人であったゼノビアは文化事業にも積極的に注力した。オダエナトゥスに嫁いだ時点から宮廷に学問の中心地としての大きな役割を持たせるよう努力したことで、ゼノビア治世下のパルミラには多くの学者や知識人が移住し、まるでギリシャにおけるアテナイのようにシリア人にとって文化的な学習を提供する場となったと言われる。
ローマに対抗し戦場で勇敢に戦った女王という印象が強いゼノビアだが、それ以上に政治的・文化的にも非常に優れた君主であったと言える。ギボンの高評価も宜なるかな。
- 余談だがゼノビアとオダエナトゥスとの息子の子孫の家系は長く続き、その血筋は東ローマ帝国のユスティニアヌス朝やヘラクレイオス朝、西ゴート王国に繋がっている。また、4〜5世紀の聖人ゼノビウスはゼノビアの子孫であるという伝承が残る。
- 砂漠の女王ゼノビアとローマ皇帝アウレリアヌスの攻防戦は後世も劇作家達の創作意欲を刺激し、『ウィリアム・テル』で有名なイタリアの作曲家ジョアキーノ・ロッシーニも『パルミラのアウレリアーノ』というオペラを作曲している。
- 強大なローマ帝国に反抗し悲劇的な結末を迎えた女王の逸話は、英国におけるブーディカ同様に、近現代の中近東で「自由を求めて戦った英雄」として扱われた。
特にパルミラ遺跡を擁するシリアでは愛国の象徴として500ポンド札(2007年まで発行されていたもの)に彼女の肖像画が描かれたり、1997年にはゼノビアを主人公としたテレビシリーズが制作され人気を博したりもしている。イスラエルとパレスチナの軋轢が悪化すると、シリアではパレスチナ側にゼノビアの闘争を重ねる向きも多かったようだ。
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| | ローマ皇帝アウレリアヌスとは+クリックで展開
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- 全名はルキウス・ドミティウス・アウレリアヌス。在位期間は紀元270年-275年。
簡単に言うとローマ史上最強の叩き上げ。
- 低い身分の出にもかかわらず、一介の軍団兵として軍に入隊、戦功で昇進を重ね、ローマ皇帝に上り詰めた男。
所謂「3世紀の危機」で崩壊しかけていたローマ帝国の再建に大いに貢献した。
- ゴート人、ゲルマン人など北方異民族を撃退し、東方属州から独立したパルミラ帝国を撃破、西方属州から独立したガリア帝国を降伏させて、戦乱で三分されていたローマ帝国の再統一を成功させた功績により、元老院から「Restitutor Orbis/レスティトゥトル・オルビス」(世界の修復者)の称号を得た。
- 現代にも残されているローマ市のアウレリアヌス城壁を構築したことも有名。
- 叩き上げ軍人らしく信賞必罰には厳しく、恭順する者には寛容さを示したが敵対者には容赦がなかった。この姿勢はローマ帝国再統一にも大いに役立ったが、皮肉なことに275年、ササン朝ペルシアへの遠征中にミスを叱責された秘書官が厳罰を恐れて謀略を企て、アウレリアヌスは自軍の将軍に暗殺されるという非業の死を遂げた。
- しかし彼の業績と遺志はその後継者に引き継がれ、アウレリアヌスの死から9年後の284年に即位したディオクレティアヌス帝の改革によって帝国は再び安定期を迎えた。
- ゼノビアの名誉のために一言を添えると、彼ほどの男を苦戦させたのは相当に凄かった。
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- 宝具名のルビ「Authentic Triumph」は、和訳すると『正真正銘の凱旋式』となり、彼女がアウレリアヌス帝に与えられた敗北と恥辱の在り方を振り払い、ローマに打ち勝った"真なる戦士女王"であるIFの自分自身へと変じるための誓いを意味する。
- ローマ帝国シリア属州出身だけど宝具のルビは中近東のアラビア語ではなくローマのラテン語でもないの英語、FGO世界では一般的なことであり、なにもおかしくない。冷静に考えろ、お前どこ出身!?
- ボイスで言及している「デーツ」とは、ナツメヤシの果実のこと。糖分やビタミンCを豊富に含み、熟して柔らかくなったものや乾燥させたものはそのまま食べられる。というか成った実は放って置けば勝手に乾燥するという人間にとっておそろしく都合の良い果物。
- またジャムや菓子など料理の材料にもなり、デーツの蜜はシロップとしても利用できる。中東やアフリカで古くから主要な作物とされ、アッシリア帝国の時代から人工授粉による栽培がされていたようである。その後もイスラム教において天国に実る神聖な果物とされラマダーン(断食行をする月)の明けに最初に口にする食物と定められるなど、現代まで中東圏にとって特別な存在である。
- パルミラもナツメヤシの産地として知られたオアシスで、ギリシア語ではナツメヤシのことをパルマと言うことからギリシア人やローマ人によってパルミラと名付けられたとされている。
- 立ち絵でゼノビアの両サイドに描かれており戦闘モーションで攻撃に用いている武器は、「バリスタ」という古代から中世にかけてヨーロッパで使われた射撃兵器。古代ギリシアで開発されたとみられ、その技術を受け継いだ古代ローマ軍団が多用した。
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| | バリスタとは +クリックで展開
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- バリスタとは、簡単に言えばクロスボウを思いきり大型化させて金属や石などの重く大きい矢弾を撃てるようにした古代の大砲である。ただし人力で扱えるサイズではないため、てこの原理を利用して弦を引き絞る。
特殊な兵器ということはなく大量に生産・配備された。ディアドコイ戦争のロードス包囲戦ではマケドニア軍がヘレポリスという高さ40 mの巨大攻城塔に無数のバリスタやカタパルトを配備して攻撃を行い、対するロードス軍も城壁から大量のバリスタでこれに射撃をかけるなど、両軍が激しい撃ち合いを行った記録がある。強力な火力から歩兵の支援や攻城戦に用いられただけでなく軍艦にも搭載され、現代における火砲と似たポジションを占めていたようだ。
ローマ軍団ではさらなる改良・発展をみせ、80 kgの矢弾を発射可能な巨大バリスタまで使用できたという。逆に小型化させて歩兵が携帯できるようにしたスコルピウスという個人用バリスタも使用されていた。
- 立ち絵ではバリスタの下に車輪が描かれているが、これはローマ軍団でバリスタを台車に乗せて馬に引かせることで機動力を高める運用がなされていたことに由来するのかもしれない。
また再臨第2段階の立ち絵ではバリスタの先端が燃えているが、実際に火炎瓶のような可燃物も矢弾の弾頭として使用されていた。
- ちなみに英語で「弾道の」を意味するballisticの語源でもある。
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元はローマの属州だったパルミラ帝国でも当然バリスタが運用されていたと思われ、またパルミラ包囲戦においてアウレリアヌスは元老院に報告書を送っており、そこには以下のように書かれている。
「此処にどれ程の矢の蓄えがあるか、どれほど戦争のための準備が周到に整えられているか、槍や石弾がどれだけ多いのか、とても語り尽くせるものではない。城壁に戦争機械によって保持されていない部分は一箇所たりともなく、これらの兵器は火焔すら投射可能なのだ」
これがゼノビアがアーチャークラスで召喚された由来であろう。
カルデアには蹴鞠のアーチャーやイルカのアーチャーなどさえいるので、バリスタのアーチャーは大砲のアーチャーと同じくかなりまともな部類。
座のアーチャー判定は昔から緩々
- 何気に設定上のステータスは戦士としてハイレベルを誇る。筋力Aのアーチャーはそうおらず、神話の登場人物であるアルジュナと超人オリオンに比肩し、敏捷Aに至っては二人を凌ぎ、耐久B+もかなり高い。神秘が薄くなった紀元後史実人物の英霊にしては非常に強く、例えば魔力以外の全ステータスがアルゴノーツのアタランテと互角以上。
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幕間の物語
- 開放条件:クエストクリア、霊基再臨×?回、絆Lv?
- 開放条件:未実装
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Interlude | ??? | 推奨Lv | ? | 場所 | : |
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| AP | ? | 周回数 | 2 | クリア報酬 | 聖晶石×1 |
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絆P | ??? | EXP | ??? | QP | ??? |
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| 進行度 ■□ | Battle 1/3 | ?? Lv(:) | ?? Lv(:) | ?? Lv(:) |
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Battle 2/3 | ?? Lv(:) | ?? Lv(:) | ?? Lv(:) |
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Battle 3/3 | ?? Lv(:) | ?? Lv(:) | ?? Lv(:) |
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ドロップ | | 備考 |
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Battle 2/3 | ?? Lv(:) | ?? Lv(:) | ?? Lv(:) |
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