- ドブルイニャ・ニキチッチ(Добрыня Никитич)はブィリーナと言うロシアの民間伝承に登場する「ボガトィリ(勇者たち)」と呼ばれる人物のひとり。3つ首の竜ズメイ・ゴルイニチを倒した英雄。イリヤー・ムーロメツ、アリョーシャ・ポポーヴィチと共に太陽公ウラジーミルに仕える『三勇士』、その第二位として、ロシアでは非常に著名な大英雄である。
- ドブルイニャ・ニキチッチ(Добрыня Никитич)はブィリーナと言うロシアの民間伝承に登場する「ボガトィリ(勇者たち)」と呼ばれる人物のひとり。3つ首の竜ズメイ・ゴルイニチ(ズメイ・ゴルィニシチェ)を倒したドラゴン・スレイヤー。
イリヤー・ムーロメツ、アリョーシャ・ポポーヴィチと共に太陽公ウラジーミルに仕える『三勇士』、その第二位として、ロシアでは非常に著名な大英雄である(一位はイリヤー・ムーロメツ)。
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- 「ドブルィニャ」は「善良、美しさ、偉大さ」、「ニキチッチ(ニキーティチ)」は「栄光の、輝かしい」という意味の言葉にそれぞれ由来する。繋げると「輝かしい善良さ」「偉大なる栄光」というようなニュアンスか。
- もう少し詳しく解説するとこの「ニキチッチ(ニキーティチ)」は「ニキータ」を父称の命名規則に従い変化させたもの、つまり「ニキータの息子」を意味する名前で姓(家名)ではない。またニキータという名はギリシャ語で勝利者を意味する「ニケータス」、ひいては古代ギリシャの勝利の女神ニケーにその語源を遡ることができる。
- 原典では男性。架空の人物であるが、キエフ大公スヴャトスラフ一世に仕えた軍人「ドブルイニャ」をモデルにしているのではないかと言われている。
- 彼は『ブィリーナ』説話中の「太陽公」のモデルとなったウラジーミル一世の伯父であり、スヴャトスラフの死後は軍司令官(ヴォイヴォダ)として彼を導き、ポロツク公国への侵攻やキエフ大公位簒奪などの重要な事績に関わった、あるいは直接指揮したなどとされる。
- ウラジーミル一世はビザンツ帝国からギリシャ正教を積極的に導入し、同時に土着の伝統的な信仰を激しく弾圧・偶像破壊運動を推し進めた君主としても知られている。ドブルイニャのドラゴン討伐は、ギリシャ正教が異教に対して勝利を収めたことを象徴しているという考察もある。
- ウラジーミル一世の治世は10世紀だが、叙事詩英雄としてのドブルイニャのモデルとなった人物としては、13世紀初頭にリピツクの戦いやカルカ河畔の戦いで奮戦した「黄金帯のドブルイニャ」と呼ばれたリャザン出身の戦士も一要素となっているのではないかとする研究者もいる。現在リャザン州のシロフスキー地区には彼の記念碑が建てられており、毎年「ドブルイニャの栄光」と題された祭りも催されている。
- ケルト神話同様いくつかの時代・地域に分かれているブィリーナのうち、彼らは主に10世紀頃のキエフを舞台にしたものに登場する。言語学者セルゲイ・N・アズヴェレフは全ブィリーナの種類を53に大別したが、うち6編がドブルイニャを主人公として扱ったものであったという。
- ブィリーナは口承文学であり、スコモローフと呼ばれる放浪芸人がその語り手を担っていた。イヴァン雷帝も国を守る英雄譚としてのブィリーナを好み、夜ごと語り手を呼びつけ楽しんでいたというが、民衆の中へ入り支持を受けるために次第に権力者や聖職者を風刺する内容が増えていったことで、ツァーリや貴族からの弾圧を受け衰退していく。
- 「ドブルィニャ」は「善良、美しさ、偉大さ」、「ニキチッチ(ニキーティチ)」は「栄光の、輝かしい」という意味の言葉にそれぞれ由来する。繋げると「輝かしい善良さ」「偉大なる栄光」というようなニュアンスか。
- もう少し詳しく解説するとこの「ニキチッチ(ニキーティチ)」は「ニキータ」を父称の命名規則に従い変化させたもの、つまり「ニキータの息子」を意味する名前で姓(家名)ではない。またニキータという名はギリシャ語で勝利者を意味する「ニケータス」、ひいては古代ギリシャの勝利の女神ニケーにその語源を遡ることができる。
- ズメイとは、東ヨーロッパや中央ヨーロッパで広く知られているドラゴンで、多くの伝説に様々な種類のズメイが登場する。
バルカン半島では守護竜としての性格が強いが、ロシアの伝承に登場するものは「ズメイ・ゴルイニチ」と呼ばれ、悪役のドラゴンとして描かれることが多い。蛇を意味する「ズメイヤ」の男性形であり、語源は古スラブ語で「竜」「大地」を指す単語に由来するとされる。
- 日本ではあまり馴染みが無いかもしれないが、ロシア映画『豪勇イリヤ 巨竜と魔王征服』に登場する3つ首の巨竜ズメイ(「ゴルイニチの大蛇」/米国では「ズーマの火吹きドラゴン」、日本のDVDでは「キング・ドラゴン」とも)が、『ゴジラシリーズ』の名敵役キングギドラの元ネタになったとも言われる。また、ギドラという名前自体ロシア語でヒュドラを指す言葉だったりする。
- ズメイ自体は多頭竜とされるが、絵画でも歴史的に3つ首竜として描かれることが多く、この『豪勇イリヤ』のイメージもそれを反映したものである。
- 逸話と直接の関係はないが、伝承の彼にあやかって名付けられたシェパード犬「ドブルイニャ」が2015年にロシアからフランスへ贈呈されている。このような際に名前が挙がることからもロシアでのドブルイニャの人気がうかがわれる出来事と言える。
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- 原典では男性。架空の人物であるが、キエフ大公スヴャトスラフ一世に仕えた軍人「ドブルイニャ」をモデルにしているのではないかと言われている。彼は『ブィリーナ』説話中の「太陽公」のモデルとなったウラジーミル一世の伯父であり、スヴャトスラフの死後は軍司令官(ヴォイヴォダ)として彼を導き、ポロツク公国への侵攻やキエフ王位簒奪などの重要な事績に関わった、あるいは直接指揮したなどとされる。
- 勇敢で慈悲深い騎士の鏡のような人物であり「慈愛のドブルイニャ」「不死身のドブルイニャ」などと称えられる。
- 単に力に優れていただけでなく、弓、水泳、馬術、そしてグースリ(ロシアの伝統的な弦楽器)の名手であり、詩の才能にも長け、タヴリー(ロシア版チェス、あるいはロシア版バックギャモン。ルールは現存していない。)勝負で負けなしであるなど、深い教養を窺わせる説話も多数存在する。
- 勇敢で慈悲深い騎士の鑑のような人物であり「慈愛のドブルイニャ」「不死身のドブルイニャ」などと称えられる。
- 単に力に優れていただけでなく、弓、水泳、馬術、そしてグースリ(ロシアの伝統的な弦楽器)の名手であり、詩の才能にも長け、タヴリー(ロシア版チェス、あるいはロシア版バックギャモン。ルールは現存していない)勝負で負けなしであるなど、深い教養を窺わせる説話も多数存在する。
- 不死身と称えられる通り抉られた心臓をはめ込んだら復活したというような話もある。
- また、「十二の言語を操る」ともされ、他の「ブィリーナ」中の勇士よりも(比較的)穏便に物事を解決できる知性が、ドブルイニャの勇士としての特長でもある。果ては鳥の言葉を理解する事ができたとさえいわれ、実際に後述のアリョーシャの不倫の逸話では、結婚が行われそうだという事実を旅先のドブルイニャに伝えるのは鳥であったり、自らの愛馬であったりする。
- 上記のドラゴン退治の話の他、留守中に同僚の勇者アリョーシャ・ポポーヴィチがドブルイニャが死んだという話をしてドブルイニャの妻に結婚を迫った所、帰還した(または本当に死んでいたが蘇った)ドブルイニャがアリョーシャを懲らしめるという話や、抉られた心臓をはめ込んだら復活したというような話もある。
- この知性と言語能力により説話中においてはウラジーミル公の外交官的役割を果たすこともあり、こうしたキャラクター性はモデルとなった史実のドブルイニャの立ち位置が反映されているとも推測される。
- 上述のように知略に富み、『必要な時以外は無闇に戦わない』とも評価されるドブルイニャであるが、時にはロシア英雄らしく暴力的・苛烈な部分も覗かせる。
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- ドブルィニャはウラジーミル公に命じられ、公に仕える友であるドゥナイ・イワノーヴィチと共に、公の嫁をもらうためリトアニアに赴く。
- ドゥナイはドブルィニャに「事が起きたら助太刀を頼む」と言い含めて馬を預けた後、リトアニアの王に「アプラクシア姫を下さい」と交渉するが、王の怒りを買い囚われそうになってしまう。
- そこで城の外で待機していたドブルィニャは、二頭の駿馬の手綱を片手に、もう片手に凄まじい重さの棍棒(あるいは長椅子、車軸)を持って振り回しながら城外を駆け回り、リトアニア王の配下を打ち殺しまくる大立ち回りを演じる。恐れおののいた王は姫を嫁に行かせる事を決めるのだった。
- これは先述した史実のウラジーミル公の事績であるポロツク公国侵略、およびログネダ姫の強奪が根底のモチーフにあるとする見方が強い。史実におけるドブルィニャのモデルとなった人物も、この出来事に深く関わったと見られている。
- 棍棒の重さは40プード(1プード=約16kg。40プードは約640kg)とも表現される。『ブィリーナ』では、40という数字は「非常に多い数」であることを示す慣用表現として多く用いられる。
- ここではリトアニア人までも『タタール』と表現される。ロシアは13世紀前半から15世紀まで『タタールのくびき』と呼ばれるモンゴル支配にさらされていた時期があり、『タタール』の語は当時、敵対的な外国人全般を表現する語と理解されていたものともいわれる。『ブィリーナ』ではこういった地理的錯誤は珍しいものではない。
- それにしても片手で二頭分の手綱を持つとは、どうやって馬に乗っていたのだろうか。
- 『ドゥナイ』には続きがあり、ドゥナイのナスターシア姫(ドブルィニャの妻とは別)との出会い、結婚、その後の悲劇と超展開(ドゥナイの血がドナウ川の元となったというオチ)なども含めて、神話的な要素の強い話である。ここでは割愛するが、興味があれば是非読んでいただきたい。
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- ズメイ(ドブルィニャが退治したものとは別個体)の友人(あるいはズメイが化けた存在)である邪悪な魔女マリンカ・イグナーティエヴナの策謀に嵌り、動物に変えられてしまったドブルィニャのもとへ母親(あるいは身内)が駆け付ける。
- 母親はマリンカを圧倒し、彼女はたまらずドブルィニャへ「私と結婚するならば人間に戻してやる」と誘惑する。
- ドブルィニャはこれに乗って人間に戻してもらうと、すぐに「ロシアの夫が妻を躾ける方法を教えてやる」と言って、「ズメイを愛撫した」手を、「ズメイと絡み合った」足を、「ズメイに接吻した」唇を順番に斬り落とし、最後に「悪しき異端の知識を持つ」頭を斬り落として殺してしまう。
- その後、キエフから邪悪な魔女を追い払ったドブルィニャは、人々から感謝を受けるのだった。
- これは最も苛烈な処刑を行うヴァリアントであり、すっぱりと首を斬り落としてしまうものもある。また母親がマリンカを動物に変えて退治するパターンもある。
- 残酷な描写とも取れるが、ズメイの化身ともされる悪の象徴たるマリンカを完全かつ入念に滅ぼす、という強い勧善懲悪のコンセプトが現れている。裏返して、いかなる誘惑にも乗らない英雄の忍耐強さを強調するストーリーとして、当時のロシア人の理想の男性像を見て取る事が出来るだろう。
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- ブィリーナとしては『ドブルイニャとズメイ』というタイトルで知られる。
- 叙事詩はドブルイニャの母親が若きドブルイニャに忠告をする場面から始まる。母親は「サラセン山脈を避けて通ること」「子供のドラゴンを踏みつけないこと」「ロシア人の虜囚を救出しないこと」「プチャイ川で水浴びをしないこと」を重々息子に言い聞かせたが、彼はあろうことかそれらの言いつけを全て無視、破って実行した。
- 母親の忠告を忘れプチャイ川で水浴びをしたドブルイニャは、12の胴(あるいは尾)を持つドラゴン(ズメイ・ゴルイニチ)と遭遇する。素っ裸で武器を何一つ持っていなかったドブルイニャは絶望するが、「ギリシャの帽子」を見つけ出すとそれを使ってドラゴンを打ち倒す。
- 母親の忠告を忘れプチャイ川で水浴びをしたドブルイニャは、3つの首、12の尾を持つドラゴン(ズメイ・ゴルィニシチェ)と遭遇する。素っ裸で武器を何一つ持っていなかったドブルイニャは絶望するが、「ギリシャの帽子」を見つけ出すとそれを使ってドラゴンを打ち倒す。
敗北したドラゴンは自身を殺さないようドブルイニャに懇願し、両者は互いに攻撃をしない旨の約束を交わした。ところがドラゴンは舌の根も乾かないうちにその約束を破るとキエフに飛び去り、ウラディーミル公の姪であるザバヴァ姫を誘拐してしまった。
- この「ギリシャの帽子」は聖なる武器の別名でも何でもなく、どうやら本当にただの帽子(話によっては頭巾だったり兜だったりする)を使って倒したらしい。パターンによってはギリシャの土が詰まっていたなどと言われることもあるが、どちらにせよ武器ではない。これには投石機で巨人に挑むダビデだってびっくりするだろう。
- ズメイ・ゴルィニシチェについては12の尾ではなく12の胴を持つとするパターンも存在する。また首も3つ首がよく知られているが前述の通り明確に語られているわけではない。このあたりの揺れは口述叙事詩が形を変えながら語り継がれていったためであり、小ネタ内の伝承もあくまで有名な伝承の1パターンであることに留意していただきたい。
- この「ギリシャの帽子」は聖なる武器の別名でも何でもなく、どうやら本当にただの帽子(話によっては頭巾だったり兜だったりする)を使って倒したらしい。パターンによってはギリシャの土が詰まっていたなどと言われることもあるが、どちらにせよ武器ではない。これには投石機で巨人に挑むダビデだってびっくりするだろう。
- 何故このような単なる帽子が武器たりえたのかについて、「ギリシャの帽子」は修道僧の頭巾や巡礼の装束の一部であり、すなわち10世紀にウラジーミル一世によりロシア外部からもたらされ、国教として受容された「ギリシャ正教」の象徴として、『邪悪な超自然的存在を滅するだけの強力な魔力を有している』と当時のロシア人たちに納得されていたためではないかとする考察が存在する。
- ドラゴンとドブルイニャが交わした約束は、主に「ロシア人を拐わない」「(ドブルイニャの)妹になる」というものであったとされる。
- ドラゴンとドブルイニャが交わした約束は、主に「ロシア人を拐わない」「ロシアの空を飛ばない」「(ドブルイニャの)妹になる」等というものであったとされる。結局ドラゴンは「妹になる」という契約以外の全てを破った。
- その後ドブルイニャがキエフに到着すると、怒り心頭のウラディーミル公は彼に姪を取り返すか、さもなくば死罪と宣告する。ドブルイニャが任務を果たす上で馬も槍も無いのにとぼやくと、母親は家宝の馬ブルコ号と絹が編み込まれたシャマフ産の魔法の鞭を与えて彼を送り出す。
- その後ドブルイニャがキエフに到着すると、怒り心頭のウラジーミル公は彼に姪を取り返すか、さもなくば死罪と宣告する。ドブルイニャが任務を果たす上で馬も槍も無いのにとぼやくと、母親は家宝の馬ブルコ号と絹が編み込まれたシャマフ産の魔法の鞭を与えて彼を送り出す。
- なお「槍もない」とぼやいたドブルイニャだが、その後のドラゴンの戦いの際にはしっかり槍を持っている。母親からの贈り物の中には入っていなかったが、この槍がどこから来たのかが語られることは特にないようだ。
- 誘拐された人々が幽閉されていた洞窟に辿り着いたドブルイニャは、ロシア人虜囚を救出して子竜たちを踏み殺す。ところが、死に際に一頭が馬の脚に噛み付き、動けなくしてしまう。進退に窮したドブルイニャだったがそこで魔法の鞭の存在を思い出し、それを振るうと馬は再び動けるようになった。
- 自らの子供を殺されて怒り狂った母竜は再びドブルイニャに戦いを挑む。サラセン山脈で行われた英雄と竜の戦いは三日続き、とうとう三日目にはドブルイニャの方が戦いを放棄して逃げようとまで考えるほど追い詰められた。しかし突然響いた天の声があと三時間逃げずに戦うようドブルイニャに語りかけ、息を吹き返した彼はその三時間でドラゴンを殺すことに成功した。
- 死んだドラゴンから流れ出た大量の血液は大地に吸収されることもなく留まり続け、結果ドブルイニャはまたしても三日間にわたり血の海を泳ぐ羽目に陥った。天の声は再び彼にアドバイスを与え、それに従って槍を地面に突き刺したことでようやく血はなくなり、ザバヴァ姫も救出された。
- 任務を果たしたドブルイニャだったが、彼は農民だったために姫との婚姻は許されず、アリョーシャ・ポポヴィッチが姫を娶ることとなる。ドブルイニャは女戦士ナスタシアと出会い、彼女と結婚した。めでたしめでたし。
- 任務を果たしたドブルイニャだったが、彼は農民だったために姫との婚姻は許されず、アリョーシャ・ポポーヴィチが姫を娶ることとなる。ドブルイニャは女戦士ナスターシア(アナスタシアではない。念のため)と出会い、彼女と結婚した。めでたしめでたし。
- ドブルイニャの家系については、ウラジーミル公に連なる古い貴族の系譜だったとする話や裕福な商人が父だったとする話もあり一定しない。史実を考えると貴族家系であったとする設定が先にあり、英雄伝説が庶民に広まるにつれて出自が民間に寄っていったものと考えられる。いずれにせよ、ナスターシアが彼の終生の妻となった点はどの説話でも変わらない。
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- ドブルイニャの説話において悪竜ズメイと同等かそれ以上に重要な役割を占めるのが、妻ナスターシア・ミクリシュナである。
彼女はボガトィリの一人であるミクーラ・セリャニノヴィチの末娘で、ポリャニッツァと呼ばれる女戦士の一員だった。分かりやすく言うとロシア版アマゾネス。
- この夫婦については上記のズメイ討伐でも触れられているが、『ドブルイニャの結婚(ドブルイニャとナスターシア)』『ドブルイニャとアリョーシャ』で詳しく歌われている。
- 二人の馴れ初めは非常に暴力的かつ衝撃的なもので、会合の場でナスターシアを男と勘違いしたドブルイニャが彼女に殴りかかるという流れであった。普通の女性ならこの時点で即死なのだが、なんとナスターシアは武勇に優れるドブルイニャを返り討ちにすると、彼を戦利品として袋詰めにしてしまう。
ところが、その後でナスターシアは「誰か男性をその袋に入れておいて、もし自分が気に入ったなら彼と結婚する。そうでないなら頭を切り刻む」と自身で決めていたことを思い出した。袋詰めにされたドブルイニャを気に入り惚れ込んだ彼女は、夫婦になることを決めたのだった。
- その後は仲睦まじく暮らしていた夫婦だったが、ある時ドブルイニャは遠方へ出征することとなる。ドブルイニャはナスターシアに「6年待って自分が帰還しなかったら再婚して構わない、ただしアリョーシャ・ポポーヴィチはやめておけ」と言って家を後にする。
- ナスターシアは夫を6年待ち続け、横恋慕したアリョーシャが「ドブルイニャは死んだ」という伝えを持って再婚を迫ってからもさらに6年撥ね付け続けた。
夫の失踪から12年目、とうとうナスターシアがアリョーシャを拒み切れなくなってウラジーミル公を仲人に婚儀を挙げることになったまさにその時に、変装したドブルイニャが帰還する。
吟遊詩人として宴で一席唄を披露した後に正体を明らかにしたドブルイニャがアリョーシャを懲らしめ、夫婦は12年越しに再会し、叙事詩は喜びの中に幕を閉じる。
- 不在の夫を信じて何年も待ち続けた妻がしつこい求婚者を拒絶できなくなった時に夫が帰還して求婚者に懲罰を加える、というこの一連の物語は『オデュッセイア』においてオデュッセウスがペーネロペーの下へ帰還するくだりと非常に共通項が多く、ロシア版『オデュッセイア』と言っても過言でないほど成立に際して大きく影響を受けたのではないかとも考えられている。マイルーム会話でオデュッセウスに親近感を抱いているのはこういった事情を基にしたものであろう。
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- 何故かケモ耳尻尾つき。
ドブルイ"にゃ"ってこと?
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- ドブルイニャの逸話においては上記の略奪婚まがいの行為の結果として罵倒されたり殴られたり、ヴァリアントによっては不具にされたり投げ殺されたりと散々な目に遭っているアリョーシャ・ポポーヴィチだが、一説にはドラゴンとも竜人とも言われるトゥガーリン・ズメィェヴィチを一騎打ちで討伐するなど、基本的にはボガトィリ三勇士の名に恥じない大英雄である。
- 三人の中では最も若年とされること、ドブルイニャ同様に知性派である一方で奸智に長けたり嘘吐きだったりとトリックスター的な騎士であること、時代が下るに従ってより暴力的で分かりやすい結末の方が民衆受けするようになったこと等で、調子に乗って制裁される役回りという描写が増えていったものと思われる。
- 実際、アリョーシャが悲惨な結末を迎える話は近代のものが多い。再婚についてはウラジーミル公のお節介によるものというヴァリアントもある。
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- 逸話と直接の関係はないが、伝承の彼にあやかって名付けられたシェパード犬「ドブルイニャ」が2015年にロシアからフランスへ贈呈されている。このような際に名前が挙がることからもロシアでのドブルイニャの人気がうかがえる。
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- 宝具「邪竜来りて罪を吐く」
ズメイとは、東ヨーロッパや中央ヨーロッパで広く知られているドラゴンで、多くの伝説に様々な種類のズメイが登場する。
バルカン半島では守護竜としての性格が強いが、ロシアの伝承に登場するものは「ズメイ・ゴルイニチ」と呼ばれ、悪役のドラゴンとして描かれることが多い。蛇を意味する「ズメイヤ」の男性形であり、語源は古スラブ語で「竜」「大地」を指す単語に由来するとされる。
- 日本ではあまり馴染みが無いかもしれないが、ロシア映画『豪勇イリヤ 巨竜と魔王征服』に登場する3つ首の巨竜ズメイ(「ゴルイニチの大蛇」/米国では「ズーマの火吹きドラゴン」、日本のDVDでは「キング・ドラゴン」とも)が、『ゴジラシリーズ』の名敵役キングギドラの元ネタになったとも言われる。また、ギドラという名前自体ロシア語でヒュドラを指す言葉だったりする。
残念ながら映画の作中でのズメイはあまり動かないが、ソ連軍から貸し出された火炎放射器を口内に仕込んだ巨大模型の迫力は圧巻である。
- ズメイ自体は多頭竜とされるが、絵画でも歴史的に3つ首竜として描かれることが多く、この『豪勇イリヤ』のイメージもそれを反映したものである。
- 殆どの逸話でズメイはドブルイニャに殺される結末となるが、2006年にロシアで製作されたアニメ映画では子供向けということもあってかドブルイニャと戦って叩きのめされたのち改心して親友になるという展開になっている。
- FGOのズメイは、色と頭部デザイン的にはどちらかと言えばデスギドラの方が近いかもしれない。
- 吐き出すドラゴンブレスは『三頭煌竜焔』というらしい。
- 本作で何故かケモ耳尻尾つき。
ドブルイ"にゃ"ってこと?
おまけに巨乳セクシー衣装いくら不死身でもロシアでそれは寒くない?
- ズメイ(先述のものとは別個体)の友人(あるいはズメイが化けた存在)である邪悪な魔女マリンカ・イグナーティエヴナとの戦いの逸話では、彼女の姦計に嵌められたドブルィニャが動物に変えられてしまうという場面が存在する。変えられる動物はほとんどの場合金の角のオーロックス(牛の一種。現在は絶滅している。)であるが、鷹やオコジョに変えられたり、「鼠に変えて猫に食べさせる」と言われるヴァリアントもある。ここから取っている可能性もあるだろう。
- 因みに、動物に変えられたドブルィニャを救うのは母親(あるいは叔母、姉)である。彼女はマリンカより強い善の魔女としてマリンカを圧倒し、「牝馬に変えてやる」と脅すなどする。
なんだこの母親?
- 前述の『ドブルィニャとマリンカ』では、彼女の姦計に嵌められたドブルィニャが動物に変えられてしまう場面が存在するのでそこからの着想かもしれない。変えられる動物はほとんどの場合金の角のオーロックス(牛の一種。現在は絶滅している。)であるが、鷹やオコジョに変えられたり、「鼠に変えて猫に食べさせる」と言われるようなヴァリアントもある。
- 因みに、動物に変えられたドブルィニャを救う母親(あるいは叔母、姉)はマリンカより強い善の魔女としてマリンカを圧倒し、「牝馬(牝犬、カササギのパターンも)に変えてやる」と脅すなどし、話によっては実際に変えてしまう。
なんだこの母親?
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| | 参考:英雄を救う力について +クリックで展開
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- マリンカの説話において、動物に変えられたドブルィニャを救うのは上述した通り一般に母親(あるいは身内の女性)である。これは女性を『生活の力の象徴』とみなし、ロシア人らしい生き方、生き様によって魔術(=異教、あるいは外敵の脅威)に対抗するという思想の表れであるとする意見がある。
- 『ブィリーナ』において同じく魔術の被害を受けた人物は海の王により海中に囚われた商人サドコ、石に変えられた英雄ミハイル・ポティク等が居る。後者はイリヤー、ドブルィニャの二人がどうやってもポティクを元に戻す事が出来なかったところ、聖二コラを名乗る人物が突如現れ、ポティクは人間に戻る。いずれにおいても『聖二コラが窮地に陥った主人公を助ける』点は同じで、これは前述のケースに対し、聖なる(=キリスト教の)力で魔術(=異教)を破ると言う思想のあらわれとも考えることができる。
- この聖二コラは、船乗りの守護聖者二コラオス。サンタクロースの原型としても知られるが、こと『ブィリーナ』では英雄を超常の力から救う存在として活躍する。
- このように『ブィリーナ』においてはしばしば、英雄は(魔術を知らず、大抵のことをフィジカルで解決するため)魔術になすすべがなく、それは外部の力によって解決されるものとして描かれる。
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- 騎乗している竜が白色なのは、ロシアの高名な画家ヴィクトル・ヴァスネツォフが19世紀末に描いた油絵『ボガトィリ』においてドブルイニャが跨る馬が白馬であることが元ネタと思われる。
- ドブルィニャの馬は上述の通り『ブルコ号』だがブィリーナに登場する馬は超常の力を持つことが多く、予言や予知の能力、時には人語を喋ることも珍しくない。
- 他の説話『デューク』では、大金持ちの勇士チュリーラ・ブレンコヴィチとデューク・ステパーノヴィチらが、自らの財を競って賭けをする。その中で「互いの馬でドニェプル川を飛び越える」という賭けがあったが、デュークの馬は「かりそめの馬の翼を広げ飛んでみせます」と豪語し、みごと1ヴェルスタ(約1km)をひと飛びで飛び越した。
- なおデュークの馬は、長兄にイリヤーの馬、二番目の兄にドブルィニャの馬、そして末弟にチュリーラの馬を持つ四兄弟の三男であると本人(馬)により語られる。彼の言葉から、ドブルィニャの馬はこれに相当する、あるいは超えた能力を持っていると考えられる。
- 本作の竜は、作中珍しいくらいバカで助平なド変態。ここまで清々しく突き抜けたキャラはなかなかいない。
(。∀ ゚) ...いや、いたわ。
かなり際どい発言をしては主人に制裁を食らっているが、ドブルイニャとは「旦那」「我が愛馬」と互いに長年の相棒として信を置いており、要所要所で息の合った抜群のコンビネーションを見せる。有能な変態
元々は本当に馬だったのだが、前述のズメイをドブルイニャが倒した折、その呪いを受けて飛竜に変質してしまったとのこと。
- ニキチッチが女性となっている理由について、ファンの間では様々な考察・解釈がなされているものの、現状では公式からハッキリしたことは語られていない。
同時にケモ耳である点や、猛獣・魔獣型・ケモノ科・竜特性あり(ヒト科特性なし)である点なども、具体的な理由はまだ分かっていない。
- キャラクターデザイン及びイラスト担当のろび~な氏は『Fate/EXTRA』及び『Fate/EXTRA CCC』のコミカライズを担当している。
- ゲオルギウス、マルタ系サーヴァント、オデュッセウス、アナスタシア(水着版でも可)、アルトリア・ペンドラゴン系サーヴァント、アーサー・ペンドラゴン、???(会話10)、光のコヤンスカヤor闇のコヤンスカヤ所持時にマイルームに特殊会話が追加される。
- 会話10は恐らく対象者が複数人いるタイプと思われる。
- 会話11は光、闇のどちらか所持のみで追加の模様。
会話12は恐らく上記に加え「非霊長生存圏ツングースカ・サンクチュアリのエピローグクリア」も条件か(ツングースカ本編未クリア、ツングースカエピローグクリア、Lb6.5未クリアで解放された)。
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| | コメ欄にあった報告まとめ
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- 会話12開放後、会話11がマイルームからは再生できない報告あり。
ただし「ボイスリスト」、及び「サーヴァントとの記録」からは再生可能。
- 未開放だった場合、会話12開放の条件(ツングースカエピローグクリア)を達成していても、最初の1回のみ会話11もマイルームで再生できる?(検証不足)
絆Lvで開放される会話と同じ仕様?(絆Lv.5到達後でも絆Lv.1〜4の会話が未開放だった場合、1回だけ絆Lv.1〜4の会話もマイルームで再生される。その後は絆Lv.5の会話しか再生されなくなる)
- もともと会話11は闇のコヤンスカヤ実装前(光のコヤンスカヤのみの時)から開放できるようになっていた。その後、会話12追加時に何らかの仕様変更があったのかもしれない。
なお、会話12が追加された詳細な時期は不明(ツングースカエピローグ実装後?)。
- 筆者の場合、光所持(闇未実装)&ツングースカクリア前でマイルームにて会話11が再生できた。
その後、具体的な日時は不明だが会話12追加後、光闇両方所持&ツングースカクリア後でマイルームにて会話12は再生できるが、会話11は再生されない(会話11、12どちらもボイスリスト等からは再生可能)。
またサブ垢(光のみ所持、ツングースカのエピローグのみクリア)で試したところ、こちらも全く同じ状況で、マイルームで再生されるのは会話12のみ(こちらも会話11、12どちらもボイスリスト等からは再生可能)。
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- マイルームの「お気に入り変更」でのみ、ニキチッチの並びがおかしくなっている。
レベルなどが揃ってる場合、霊基一覧などでは「ニキチッチ、シンエリザ、騎カイニス、ハベトロット」の実装順の並びになるが、「お気に入り変更」では一部のソート順で「シンエリザ、騎カイニス、ニキチッチ、ハベトロット」になっている。
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幕間の物語
- 開放条件:クエストクリア、霊基再臨×?回、絆Lv?
- 開放条件:未実装
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| | +クリックで展開
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Interlude | ??? | 推奨Lv | ? | 場所 | : |
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| AP | ? | 周回数 | 2 | クリア報酬 | 聖晶石×1 |
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絆P | ??? | EXP | ??? | QP | ??? |
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| 進行度 ■□ | Battle 1/3 | ?? Lv(:) | ?? Lv(:) | ?? Lv(:) |
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Battle 2/3 | ?? Lv(:) | ?? Lv(:) | ?? Lv(:) |
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Battle 3/3 | ?? Lv(:) | ?? Lv(:) | ?? Lv(:) |
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ドロップ | | 備考 |
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| | 進行度 ■■ | Battle 1/3 | ?? Lv(:) | ?? Lv(:) | ?? Lv(:) |
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Battle 2/3 | ?? Lv(:) | ?? Lv(:) | ?? Lv(:) |
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Battle 3/3 | ?? Lv(:) | ?? Lv(:) | ?? Lv(:) |
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ドロップ | | 備考 |
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