- 様々な地域伝承と習合しているようで、その実像ははっきりしない。自称・出身地の有名所だけで三カ所もある程。
- 出生は鬼子として生まれた時から恐れられていた説や、人間の美男子として育つもある日流血を切っ掛けに鬼と化した説など。当時の鬼に対する認識からか、基本的には人間の両親から生まれたとするエピソードが多い。酒呑童子とは鬼となった後に出会うパターンが主で、遠く聞こえる酒呑の悪名に惹かれて会いに行ったとも実家を追い出された後たまたま出会ったとも言われる。越後出身とする説では同郷で共に育った仲。関係も友人、義兄弟、恋人、親子など様々。
- 大江山の鬼退治では渡辺綱と一対一で戦い、そこが主戦場から離れていたために一人だけ生き延びることが出来たという。
・FGOで茨木童子の代表的な物語とされる「羅生門の鬼退治」のあらすじは以下の通り。
都を守る頼光四天王の渡辺綱は「最近このあたりに鬼が出る」という噂の真偽を確かめるため、羅生門を訪れた。探索していると稲光と共に、恐ろしい鬼が出現。天井から襲い掛かって来たそれに綱は応戦し、ついに鬼の腕を切り落とし撃退した。切り落とした腕を持ち帰って頼光に見せると陰陽師の安倍晴明が呼ばれ、綱は七日間の物忌み(他人との接触を断つこと)を以て封印するよう指示された。ところが物忌みが終わる直前、遠方に住む伯母(養母とも)が綱を訪ねてきた。綱は物忌み中である旨を伝えたが「せっかく会いに来たのに」と訴えられ、血縁の情に抗しきれず家に入れてしまう。事情を話すと彼女は鬼の腕に興味を示し、見せるよう頼んできた。これまた情に訴える彼女に根負けして鬼の腕を見せると、彼女は「これは自分の腕だ。貰っていくぞ」と言って鬼に変身。屋根を吹き飛ばしながらどこぞへと飛び去って行くのだった。
- 「渡辺綱が鬼と交戦し腕を奪うも親類に化けた鬼に取り返される」という物語は長唄や能といった様々な形で語り継がれているが、舞台が羅生門から一条戻橋に変わったり(一条戻橋の場合は美女に化けた鬼が騙し討ちを仕掛ける)、鬼が茨木童子ではなく別の鬼だったりと文献ごとに細かい違いが多い。
- 元は茨木童子とは別の鬼退治を描いた様々な説話が、時代を下るごとに渡辺綱という共通点によって同一視されストーリーが混交したと考えられる。Fateではまとめて茨木童子の物語と解釈し、似たシチュエーションで別々に起こった出来事として採用しているようだ。
- 伝承の怪物には珍しいことに茨木童子の最期については概ね「不明」とされ、Fateでの解釈の通り何処かへ逃走したきりとする話が多い。江戸時代に教養本として出された御伽草子のシリーズ(通称渋川版)では大江山で酒呑童子共々討たれたとしている。他には実家に顔を出すも追い返された話、別の山で悪さをしていた所を通りすがりの法師に追い出された話など地方の伝承にぽつぽつと顔を出す程度。近代以降の創作とみられる言い伝えでは故郷で受け入れられ一揆に参戦したなどという話も。
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