ラグランジュの定理

Last-modified: Tue, 23 Apr 2019 17:33:11 JST (1854d)
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(定理) ラグランジュの定理

仮定

  • \( G \) は有限群
  • \( H \)\( G \)部分群

主張

\( H \)位数\( G \)位数割り切る
さらに言うなら \( |G| = |G/H||H| \) である。

証明

次のステップで証明する。

  • 同値類 \( G/H = \left\{gH \mathrel{}\middle|\mathrel{} g \in G\right\} \)\( G \) の類別であることを示す。
  • 実際に個数が \( |G| = |G/H||H| \) を満たすことを示す。

同値類 \( G/H = \left\{gH \mathrel{}\middle|\mathrel{} g \in G\right\} \)\( G \) の類別であること

ところで \( G/H \)\( G \) の類別であるとは、次の両方を満たすことである。

  • 任意の \( g ~(\in G) \) に対して、ある \( A \in G/H \) が存在して \( g \in A \) (必ずどこかには分類されている) 。
  • \( G/H \) の要素である異なる集合の間に一切の交わりがない (どの要素も必ず一分類にしか属さない) 。

任意の \( g ~(\in G) \) に対して、ある \( A \in G/H \) が存在して \( g \in A \)

\( e \)\( G \) の単位元とすると \( e \in H \) であるから \( g \in gH \) 、また \( gH \in G/H \) なので正しい。

\( G/H \) の要素である異なる集合の間に一切の交わりがない

まず、 \( g_1 ~(\in G) \)\( g \in g_1H \Longrightarrow gH = g_1H \) を示す。

* \( g_1^{-1}gH \subset H \)

\( g \in g_1H \) より \( g_1^{-1}g \in H \) であるが、 \( H \)部分群であるから定義より \( g_1^{-1}gH \subset H \) は成り立つ。

* \( |g_1^{-1}gH| \leqq |H| \)

つまり \( |g_1^{-1}gH| \leqq |H| \)

* \( |g_1^{-1}gH| \geqq |H| \)

また\( b \neq c \) なら \( ab \neq ac \) は成り立つから、この場合、 \( g_1^{-1}g \) という定数と \( H \) の各要素との積は全て異なる値を取る。従って \( g_1^{-1}gH \) から \( H \) への単射が存在する。よって \( |g_1^{-1}gH| \geqq |H| \)

* \( |g_1^{-1}gH| = |H| \)

よって \( |g_1^{-1}gH| = |H| \) であり、実は単射は全単射であったことが分かる。

つまり \( g_1^{-1}gH = H \) となる。すると、 \( g_1H = g_1(g_1^{-1}gH) = gH \) となる。これで \( g \in g_1H \Longrightarrow gH = g_1H \) が分かった。

* 交わりがないこと

もし \( G/H \) の異なる要素同士に交わりがあったとする。つまり \( g_1 \in G, g_2 \in G \) について \( g \in g_1H, g \in g_2H, g_1H \neq g_2H \) となるということであるが、 \( g \in g_1H \) より \( gH = g_1H \)\( g \in g_2H \) より \( gH = g_2H \) であるから \( g_1H = g_2H \) となってしまう。
よって交わりはない。

ここまでで言えたことは、要するに \( G \) を同値類によって分類するときれいに \( G \) 全体を交わりなく分割できる、ということである。

実際に個数が \( |G| = |G/H||H| \) を満たすこと

\( G/H = \left\{g_1H = H, g_2H, \cdots, g_nH\right\} \) とする。つまり \( |G/H| = n \) となる。 \( G/H \)\( G \) を類別することから、 \( |G| = |g_1H| + |g_2H| + \cdots + |g_nH| \) とできることがわかった。ところで \( H \) から \( gH \) へは全単射がある。なぜなら \( H \) の各元と \( g \) との積が全て異なる値をとることから単射であり、 \( gH \) の作り方から全射でもあるから。よって \( |H| = |gH| \) が成立する。従って \( |g_1H| = |H| = |g_2H| = \cdots = |g_nH| \) となる。結局、 \( |G| = n|H| = |G/H||H| \) が成立する。