羃零元
freeze
仮定
- \( R \) は環
- \( x ~(\in R) \) は \( R \) の元
定義
\( x \) が羃零元であるとは、ある自然数 \( n \) が存在して、 \( x^n = 0 \) となることをいう。
例
- \( \mathbb{R} \) においては \( 0 \) のみがそれにあたる。
- \( \mathrm{Mat}(3) \) においては
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は羃零元。羃零行列ともいう。
その他
羃零元と羃零元の和は単元
\( a, b \) をともに羃零元とすると、ある \( n, m \) があって \( a^n = b^m = 0 \) となる。このとき \( (a + b)^{n + m} \) を展開した項の \( {}_{n+m}\mathrm{C}_{i} a^ib^j ~(i + j = n + m) \) に関して、 \( i \geqq n \) または \( j \geqq m \) のいずれかは必ず成り立つので、 \( a^i \) または \( b^j \) のいずれかは \( 0 \) となる。したがって \( (a + b)^{n + m} = 0 \) が分かる。 \( a + b \) は羃零元。これを繰り返すと (少なくとも有限個の) 羃零元の和は羃零元であることも分かる。
単位元と羃零元の和は単元
\( 1 \) を単位元、 \( x \) を羃零元とする。
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となるから、 \( 1 + x \) には逆元がある。
単元と羃零元の和は単元
\( a \) を単元、 \( x \) を羃零元とする。 \( a + x \) が羃零であることを見る。
\( a \) が単元であるから、ある \( b \) があって \( ab = 1 \) となる。 \( ab + xb = 1 + xb \) は \( xb \) が羃零であるから上の話の単位元と羃零元の和にあたる。つまり \( ab + xb \) は単元。すなわち別の元 \( c \) があって \( (ab + xb)c = 1 \) となる。したがって \( (a + x)bc = 1 \) 。つまり \( a + x \) に逆元 \( bc \) があるので、 \( a + x \) は単元である。