ネーター整域での既約分解

Last-modified: Sun, 27 Jan 2019 11:39:34 JST (1937d)
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(定理) ネーター整域での既約分解

仮定

主張

\( a \)既約元の積で表せる。 (これを既約分解と呼ぶことにする。)

証明

\( X \) を、 \( P \) 内の「零元でも単元でもなく既約分解もできない元」の集合とする。\( X \neq \emptyset \) と仮定して矛盾を導き、背理法により \( X = \emptyset \) を導く。
まず \( x_0 \in X \) をとる。 \( x_0 \) は既約分解できないから既約元でもない (既約元なら、それ自身ただ一つによる積として表示できているはず) 。すると既約元の定義から、ある非単元 \( x, y \) があって、 \( x_0 = xy \) と表される。
ここで、さらに \( x, y \) の両方が既約分解できると仮定すると \( x_0 \) も既約分解できるはずなので、最初に \( x_0 \)既約元でないとした仮定に反する。したがって \( x, y \) のいずれか一方は既約分解できない。
可換性があるのでどちらでも同じことだから、ここでは \( x \) が既約分解できないとしよう。すると \( x \)\( X \) の定義より \( X \) に属するはずなので、 \( x \)\( x_1 \) と呼ぶことにすると \( x_1 \in X \) である。 \( y \)単元ではないから、 \( x_1 \)\( x_0 \)単元倍ではない (つまり \( (x_0) \neq (x_1) \) )。今、 \( x_1 \mid x_0 \) であるから \( (x_0) \subsetneq (x_1) \) が分かる。
この \( x_1 \)\( X \) の元だから、今とまったく同様にして新しい \( X \) に属す元 \( x_2 \) をもってくることができ、 \( (x_0) \subsetneq (x_1) \subsetneq (x_2) \) を満たす。これは無限回繰り返すことができるから、 \( (x_0) \subsetneq (x_1) \subsetneq (x_2) \subsetneq \cdots \) という無限の昇鎖列を得ることができる。しかし、これは \( P \) がネーター整域であることに矛盾する。
よって仮定が誤りであり、 \( X \) は空集合である。つまり、「零元でも単元でもなく既約分解できない元」は存在しない (零元でも単元でもない元は、何らかの既約分解が存在する) 。

注: 既約分解が一意というわけではない。もし一意ならもちろん UFD である。