ネーター環
freeze
仮定
- \( R \) は環
定義
以下の同値な条件のいずれかを満たすとき、 \( R \) はネーター環であるという。
1. 任意の \( R \) のイデアルが有限生成。
2. \( R \) のイデアルの任意の昇鎖列は有限回で停止する。
すなわち \( I_1 \subset I_2 \subset I_3 \subset \cdots \) となるようなイデアル \( I_i ~(\subset R) \) をとったとき、あるイデアル \( I_\infty \) とある整数 \( N \) が存在して、 \( n \geqq N \) ならば \( I_n = I_\infty \) を満たす。
証明
(1 \( \Longrightarrow \) 2)
適当なイデアルの昇鎖列 \( I_1 \subset I_2 \subset I_3 \subset \cdots \) を用意する。
ここで \( I_\infty = \bigcup_{i=0}^\infty I_i \) とすると、仮定よりこれは有限生成。よって、ある元 \( r_1, \cdots, r_n \in R \) が存在して、 \( \langle\{r_1, \cdots, r_n\}\rangle = I_\infty \) となっている。 \( I_\infty \) の定義から、どの \( r_i \) もイデアルのどれか ( \( I_{j_i} \) とする) に含まれている。イデアル同士には包含関係があるので、 \( j_i \) より大きい全ての \( k \) で \( r_i \in I_k \) が成り立つ。よって、この \( j_i \) の最大値を \( N \) とすると、 \( I_N \supset \langle\{r_1, \cdots, r_n\}\rangle = I_\infty \) となる。すると \( I_N \subset I_\infty \) かつ \( I_N \supset I_\infty \) が分かるので、 \( I_N = I_\infty \) となる。
(2 \( \Longrightarrow \) 1)
背理法で示す。有限生成でないイデアル \( I \) が存在するとする。すると、このとき \( r_1 \in I \) をとって \( I_1 = (r_1) \) とすると \( (r_1) = I_1 \subset I \)
次に \( r_2 \in I \setminus (r_1) \) をとってきて \( I_2 = \langle\{r_1, r_2\}\rangle \) とすると \( I_1 \subset I_2 \subset I \) となる。これを繰り返すと \( I_1 \subset I_2 \subset I_3 \subset \cdots \) となり、 \( I \) が有限生成ではないから \( r_i \) が次々と無限にとれてしまう。これは昇鎖列が有限回で停止することに矛盾する。よって仮定が誤りで、イデアル \( I \) は有限生成であった。
例
- PID は任意のイデアルが単項イデアルなので、もちろん有限生成であって、ネーター環。
- \( \mathbb{Z} \) は PID なのでネーター環。
- ネーター環の剰余環はネーター環。
- ネーター環の部分環はネーター環とは限らない。