UFD で元の素元分解は一意的 のバックアップ(No.1)

(定理) UFD で元の素元分解は一意的

仮定

  • \( R \) は UFD
  • \( a ~(\in R) \) は \( R \) の零元でも単元でもない元

主張

\( a \) の素元分解は (積の各項の単元倍を除いて) 一意的である。

証明

\( n,m \) を自然数とする。 \( R \) の素元 \( p_1, \cdots, p_n, q_1, \cdots, q_m \) を使って \( a = p_1 \cdots p_n = q_1 \cdots q_m \) の2通りに素元分解ができたとする。
このとき、 \( p_1 \mid a \) であるから、 \( p_1 \mid q_1 \) または \( p_1 \mid q_2 \cdots q_m \) のいずれかが成立。
もし \( p_1 \mid q_1 \) であるなら、何か適当な元 \( b \) を用いて \( ap_1 = q_1 \) と書ける。ところで \( q_1 \) は素元であるから既約元でもある。そこで既約元の定義により \( a \) が単元か \( p_1 \) が単元であるが、 \( p_1 \) は素元なので単元ではない (素元はその元が生成する単項イデアルが素イデアルであるものであるが、単元の単項イデアルは \( R \) 全体となる。これは素イデアルとは認めないと定義されている) 。従って \( a \) が単元となる。すなわち \( q_1 \) は \( p_1 \) の単元倍である。
一方、 \( p_1 \mid q_2 \cdots q_m \) であるなら、また積を \( p_1 \mid q_2 \) または \( p_1 \mid q_3 \cdots q_m \) と分解して同様の議論をすることができる。これを繰り返すと、最終的に \( q_1 \cdots q_m \) のどれかが \( p_1 \) の単元倍であることが分かる。
さて、 \( p_1 \) を除いた \( p_2 \cdots p_n \) と、 \( p_1 \) の単元倍になっている \( q_i \) を除いた \( q_1 \cdots q_{i-1} q_{i+1} \cdots q_m \) は、単元倍を除いて等しいので、上と同様の議論ができる。これを繰り返していくと、いずれか一方の素元分解の項が尽きたときに残っているのは単元ということになる。よって結局、二つの素元分解は各項の単元倍を除いて等しい。

例

  • \( \mathbb{Z} \) において、たとえば \( -6 \) について考えると、 \( -6 = 2 \cdot (-3) \) という分解しかありえない。実際 \( (-2) \cdot 3 \) というのは両方に単元 \( -1 \) をかけただけだけなので同一視されるし、 \( 1 \cdot (-6) \) といった積は \( 1 \) が素元 (＝素数) ではないので成立しない。