極大イデアルによる剰余環
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(定理) 極大イデアルによる剰余環
仮定
- \( R \) は環
- \( I ~(\in R) \) は部分群
主張
\( R/I \) が体 \( \Longleftrightarrow \) \( I \) が極大イデアル
証明
\( R/I \) における加法の単位元 \( \overline{0} \) は \( I \) であることに注意。 \( x + I \) を単に \( \overline{x} \) と略記する。 (ここではそれは単なる略記である。)
\( \Longleftarrow \)
\( I \subsetneqq J \) となるようなイデアル \( J \) を考える。
\( x \in J \setminus I \) をとる。このとき \( x \notin I \) より \( \overline{x} \neq \overline{0} \) となる。 \( R/I \) は体であるから、ある \( \overline{y} ~(\in R/I) \) で \( \overline{x}\;\overline{y} = \overline{1} \) となるものが存在する。つまり、ある \( i_1, i_2 \in I \) を用いて \( xy + i_1 = 1 + i_2 \) つまり \( xy + i_1 - i_2 = 1 \) とかける。
ところで \( y \in J, ~~ i_1, i_2 \in I \subset J \) より、 \( xy + i_1 - i_2 \in J \) すなわち \( 1 \in J \) が分かる。 \( 1 \) を含むイデアルは \( R \) 自身になるので、 \( J = R \) がわかる。
以上から、 \( I \) より大きいイデアルは \( R \) しかないと分かる。 \( I \) は極大イデアルである。
\( \Longrightarrow \)
\( \overline{x} \neq \overline{0} \) をとると \( x \notin I \) であるから、
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は \( I \) を真に含むイデアルとなる。 \( I \) は極大であったから、このイデアルは \( R \) 自身でしかありえない。したがって \( 1 \in (x) + I \) となる。 \( yx + b = 1 \) を満たす \( y, b \) が存在することを意味する。このとき任意に \( i \in I \) をとって両辺に足し、 \( b \) を移項すれば \( yx + i = 1 + i - b \) となる。 \( 1 + i - b \in 1 + I \) となり、 \( i \) を任意に動かすため \( \left\{1 + i - b \mathrel{}\middle|\mathrel{} i \in I \right\} = I \) となる。よって、 \( yx + I = 1 + I \) となる。 \( \overline{y}\overline{x} = \overline{1} \) となる。したがって \( R/I \) の世界では任意の \( \overline{x} \) に逆元 \( \overline{y} \) があるから、 \( R/I \) は体である。