#style(class=split){{ #region(ネタバレ注意) //＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ #region(1：灰より出る者) //＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ #region(1：開始時) ロザリー はぁ……。 灰をこんなにまき散らしたのは一体誰なのかしら。 信じられません。 この美しい森の草木を、 このような灰で汚すなんて許せない……。 私、ここを掃除していくわ。 アンナ 私もご一緒させていただきます。 一人よりも早く片づける事ができますし。 ？？？ ……肝心なところでヤツを見失うなんて。 確かこっちに逃げたはずですが……。 ――ッ！？　その灰は……！ ロザリー この灰ですか？ 今、皆で集めてるところです。 ところで貴方は―― ？？？ なるほど……。 灰を集めてヤツを復活させるつもりですね。 私の目はごまかせません！ このルマリアが あなたたちを神の名の下に断罪します！ 覚悟しなさい！ アンナ 断罪！？ お、王子！　事態が飲み込めませんが、 私達を敵とみなしているようです！ #endregion(1：開始時) //＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ #region(1：終了時) ルマリア くッ……今は退くしかないようです。 アンナ あ……行ってしまわれましたね。 一体何だったのでしょうか。 ロザリー 嵐に巻き込まれたと思うしかないわね。 さ、気を取り直して、集めた灰を袋に 詰め――きゃッ、急に灰が動き始めたわ！？ アンナ 灰が寄り合わさって何かを形作ろうと しているようですね。 こ、これは……人間の姿形……？ フーリ まさか……、ヴァン……パイア……？ ？？？ 其方たちが予の灰を集めてくれたのか？ 礼を言おう。予は、ラキュア。 ヴァンパイアだ。 フーリ そんな……。 私達はヴァンパイアを 復活させてしまったというのですか……。 ラキュア これも何かの縁だ。礼ついでに一つ忠告して おこう。強大な力を有するヴァンパイアが すべての人間を支配しようと目論んでいる。 アンナ すべての人間を支配……！？ ラキュア 詳しい話を聞かせてやろう。 安心しろ。 予は人間の血に反応することはない。 フーリ 王子、私は長年ヴァンパイアを追っていますが、 確かに、人間に味方し、吸血欲求を抑える ヴァンパイアがいると聞いた事があります。 そして、ヴァンパイアにはいくつかの 氏族が存在しています。もし彼女の言う事が 本当ならば、大変な事に……。 ラキュア 事の重大さは伝わったようだな。 では、落ち着ける場所に案内してもらおう。 #endregion(1：終了時) //＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ #region(1：終了後) ラキュア 魔物が復活する前の世界の話だ。 かつてこの世には多くのヴァンパイアが存在し、 様々な系譜の氏族が存在した。 氏族間での牽制はあるものの、表立って争う事は なかったのだが、魔物の復活により人間の数が 減少すると、その調和は乱れた。 ヴァンパイアは常に適正な数に保たれなければならない。 数が多すぎると人間を滅ぼしてしまい 自らの首もしめてしまうからな。 必然的に我らヴァンパイアは争い、 数多く存在していた氏族も今や三つの勢力を 残すのみとなった。適正な数になったという訳だ。 数が減ったとて、生き残った三つの氏族が、 一つになることはなかった。 それぞれ人間に対する考え方が異なっていたからな。 ヴァンパイアの本能に従い生きる強硬派。 人間を支配し、生態系を調整する支配派。 人間と協力して生きていこうとする共存派。 そして、予は、共存派のリーダーだった。 魔物復活後、しばらく三氏族は互いの牽制 によって静観のみに徹していたが、強硬派が 人間に滅ぼされたことで、事態は急変した。 支配派は独裁体制を築こうと、少数派であった 我ら共存派を強襲し壊滅させた。 支配派は既に人間社会に溶け込み、巧みに 人間を操っている。予の氏族が滅んだ今、 奴はすぐに行動を開始するだろう。 #endregion(1：終了後) //＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ #endregion(1：全体) //＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ #region(2：ヴァンパイアを追う者) //＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ #region(2：開始時) ラキュア 予は、支配派のリーダーを探す。 先ほど追ってきた人間は支配派の差し向けた 刺客だが、予は人間と戦いたくない。 ヴァンパイアは人間がいてこそ存在できる。 一方的な搾取は互いに不利益しか生まない。 予は双方の為に、人間を守るつもりだ。 アンナ そういうことなら私達も同行しましょう。 先程の女性も心配ですし、彼女ならば支配派の リーダーの居場所を知っているはずですからね。 フーリ ヴァンパイアハンターがヴァンパイアと手を組 むなんて……今はそんなこと言ってられないか。 目的が同じなら一緒に戦うのが最善だしね。 ラキュア 其方たち……っふ、どうやら我ら共存派のよき 理解者となってくれる数少ない人間の様だな。 これから、よろしく頼むぞ。 ルマリア ――見つけましたよ、ラキュア。 やはり復活を果たしたようですね……。 今度こそ、私の手によってトドメをさしてみせます！ アンナ 王子、ラキュアさんが……！ 話は後です！ いそぎ助けましょう！ #endregion(2：開始時) //＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ #region(2：終了時) アンナ ようやく、撤退してくれました。 しかし、話を聞いてもらえそうにないですね……。 ラキュア 彼奴らは騙されているのだ。支配派のリーダーは 人間社会で「公爵」という立場を持っている。 その立場を利用し、人間達を操っているのだ。 予は許せぬ。支配派のヴァンパイア達は、 人を餌と断じ、あまつさえ自らの都合の良い 現実を作り、思考や言動すら思いのままだ。 アンナ 敵が人間社会に溶け込んでいるとなれば、 事態は一筋縄ではいきませんが、 このままでは彼らは公爵の餌食に……。 王子、彼らがまた現れたら、 もう一度話をしてみましょう。 #endregion(2：終了時) //＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ #endregion(2：全体) //＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ #region(3：老練なる神官戦士) //＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ #region(3：開始時) ルマリア ニコラウス様！？ 救援に来てくださったのですね！ なんと心強い加勢でしょう。 ニコラウス がっはっはっはっ！ ワシが来たからにはもう心配はいらんですぞ。 さあ、共にラキュアを追い詰めましょうぞ！ ルマリア はい！　ですが、気をつけてください。 公爵様の言によれば、あのヴァンパイアは 相当な力を有しています。 それに、普通の吸血鬼なら殺して灰にすれば、 そのまま滅びるはずですが、 あのヴァンパイアは蘇生を果たしています。 ニコラウス それだけの蘇生力をもつということは、ヴァン パイアの中でも相当な上位種ということですな。 ルマリア ――ッ！ あれは、ラキュア！ 氏族の者達も連れているようですね。 アンナ ま、待って下さい！ 私達は貴方達の敵ではありません。 人間です！　どうか、武器を収めて下さい！ ニコラウス ヴァンパイアの氏族が何を言うのかと思えば いうに事欠いて人間であるなどと……。 ルマリア 灰を集めてヴァンパイアを復活させ……、 行動を伴にする……。 そこから考えられる事は一つしかありません。 貴方たちヴァンパイアを、 このルマリアは絶対に赦しません！ さあ、覚悟してください！！ #endregion(3：開始時) //＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ #region(3：終了時) アンナ 皆さん、もう争うのは止めて下さい！ 私達は敵ではありません！　そして、 それはラキュアさんも同じです。 貴方達を先導する公爵こそが、 ヴァンパイアであり、この争いの元凶なのです。 どうか、私達の話を聞き入れて下さい！ ニコラウス 公爵殿が……ヴァンパイア？ だっはっは、これは参りましたな。 久しぶりに笑わせて頂きましたぞ。 ルマリア 高き品性と人望厚き公爵様が、 冷血なヴァンパイアですって……、 愚弄するのもいい加減にして下さい！ 貴方たちの戯れ言に付き合う暇はありません。 ニコラウス様、ここは一時撤退し 公爵様に助力願いましょう。 ラキュア …………行ってしまったな。 公爵め、人心掌握の手管は完璧のようだ。 しかし、彼らはいずれ公爵に……。 アンナ 悪い予感がします……。 王子、彼らのあとを追いましょう！ #endregion(3：終了時) //＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ #endregion(3：全体) //＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ #region(4：絡みつく羽音) //＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ #region(4：開始時) アンナ ルマリアさん達は この辺りに退却していったはずです。 しばらく近辺を捜索してみましょう。 兵士 伝令！ 周囲に複数体の敵を確認！ 待ち伏せていたようです！ ラキュア 公爵め……我らがルマリアを 追いかけることを見越しての配置か。 公爵 ――お褒めに与り恐悦至極！ 久しいな、ラキュアよ。まだ人間との共存など というぬるま湯の理想に浸っておるのか。 ラキュア 其方こそ、随分と人間の真似事が上手くなった ようだな。舞台役者にでもなるつもりか？ 公爵 口を慎め、吸血種の恥さらしめ。 美貌と力の最果てであった貴様は何処へいった？ ラキュア 美貌？　力？　そんな無為な有限を誇示した 覚えはない。其方の両眼こそ虚のようだな。 それよりも、ルマリア達はどうした？ 公爵 彼らの処遇は決している。 利用価値の無い家畜は食すに限る。 若い女の血は絶品でな、実に楽しみだよ。 そういうわけだ。悪いが失礼するよ。 生きていたら、また会おう。 我が麗しき愚かな同胞ラキュアよ……。 兵士 報告！ アンデッドの攻勢が激しく 前線が押されています！ アンナ くっ……。 王子、今は、この死地を脱する事に 専念しましょう。 #endregion(4：開始時) //＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ #region(4：終了時) アンナ 何とかアンデッドを退けることが出来ましたね。 ですが、公爵には逃げられてしまいました……。 ニコラウス ――た、助けて……くれ……。 アンナ ニコラウスさん！？ その傷はいったい……！？ 血だらけではないですか！ ニコラウス 全て、貴方達の言う通りじゃった……。 公爵は……ヤツは、化け物だ。 ヤツは人間から血液を絞りとる為に、 死なない程度に痛めつけ、 滴る血を集約して渇きを満たしていたのだ……。 フーリ なるほど。 噛まなければヴァンパイア化もしないという訳ね。 永遠に血を吸えるっていう事か。 ニコラウス ルマリア殿が……まだヤツらに軟禁されている…… どうか、彼女を助けてくだされ……。 アンナ このままでは、 ルマリアさんは、公爵の手に……。 ラキュア どちらにしても、公爵は滅ぼさねばならぬ。 ニコラウスとやら、そこに案内してもらおう。 #endregion(4：終了時) //＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ #endregion(4：全体) //＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ #region(5：公爵の家畜部屋) //＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ #region(5：開始時) ニコラウス ここは公爵が「家畜部屋」と称している 場所じゃ……。 ロザリー あの無数の骨は何……？ うそ……でしょう？ まさかアレ……ぜんぶ人間の……？ 公爵 ――ほう。 あの傷で死んでいなかったとは 大したものだな。 ルマリア ニコラウス様……うぅ……そんな……、 戻ってきて……くださるなんて……。 公爵 せっかく逃げ果せたというのにとんだ愚か者だ。 また殺されに来るとは、理解に苦しむぞ。 ラキュア 人間は互いを想い、時として自らの命を賭けて 他者を助けたいと願う種族なのだ。 仲間や友のいない其方には分からぬだろうな。 公爵 家畜同士の馴れ合いなどに興味はない。 欲するは血と統制された社会構造よ。 人は我らヴァンパイアに導かれるのが正しいのだ。 ルマリア 私は……ヴァンパイアを狩ることが使命だった というのに……その憎き怪物の手駒として…… 私は……私はぁァ……うぅぅ……。 公爵 素晴らしい叫びだ。 その絶望と後悔こそ人間の甘美さよ！ ……ああ、貴様の血はさぞ美味だろうな。 アンナ なんという悪逆非道……。許せません。 一刻も早くルマリアさんを救いましょう！ 王子、戦いのご準備を！ #endregion(5：開始時) //＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ #region(5：終了時) 公爵 ――グッ、ぁァ……そんな、バカ、な……。 人間ごときが、我を圧倒するというのか……？ 家畜どもよ！　本当に貴様らはこれで 良いのか？　これまでの生活を思い出せ！ 全てが調和し、満たされていたあの日々を。 魔物が蔓延る世界で完璧な統治と平和を享受 していたのだ。血袋同然の薄汚い身体の一つや 二つ、悦んで差し出すのが道理ではないか！？ ルマリア 偽りの平和への対価が命では、 あまりにも不条理すぎます……。 公爵 血袋のくせに「命」などと戯言を……。 まあよい。どのみち この地での搾血も限界がきていたところだ。 再び新たな合理と調和に満ちた、 素晴らしき新世界を作り上げ、血液採取の 永久機関を作り上げて見せよう。フハハハ！！ ニコラウス 逃げられてしまいましたな……いや、生きて いられたことだけでも奇跡……。ルマリア殿も、 よくぞご無事で……本当に、よかった……。 ルマリア ニコラウス様……。私はようやく、 真実の道に、この足をつけることができたような 気がします……王子様、本当にありがとう……。 ニコラウス 王子殿、どうか私達を同行させてください。 これまでの不敬を詫びると共に、 救ってくださったご恩を返させて頂きたい。 アンナ 願ってもない申し出です。 これから、よろしくお願い致します。 あの、ラキュアさんはどうなさるのですか？ ラキュア 予は公爵の後を追う。 しばしの別れだ。息災でな。 アンナ いずれ、またヴァンパイア達と戦う日が来るの でしょうか……いえ、今はルマリアさん達を救えた ことを喜びましょう。王子、本当にお疲れ様でした。 #endregion(5：終了時) //＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ #endregion(5：全体) //＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ #region(6：ルマリアの決意) //＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ #region(6：開始時) ルマリア そんな……。街にヴァンパイアが……。 ニコラウス ついに公爵が氏族のヴァンパイア達を 解き放ったというわけか……。 #endregion(6：開始時) //＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ #region(6：戦闘中) ルマリア あの噴水のヴァンパイアは……！ アイツは、私の家族を殺したヴァンパイア……。 間違いない、あの顔、忘れるものですか……。 ニコラウス 乱心なさいますな、ルマリア殿。 隣にはこの不肖ニコラウスもついております故、 独走するようなら殴ってでも止めますぞ？ ルマリア 大丈夫……大丈夫です……今の私には、 仲間がいますから……ですが、 あの噴水のヴァンパイアは、私がとどめを。 ニコラウス ……御意。 然らば、祈られよ、ルマリア殿。 ルマリア 主よ、私は罪を犯す者。私は罪の奴隷なり。 主よ、私は自らを以て復仇する復讐者なり。 主よ、心から、願い……殺しを、行います。 ……覚悟せよ、ヴァンパイア。 貴様を滅ぼした先で、 私は、私自身を取り戻してみせます。 #endregion(6：戦闘中) //＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ #region(6：終了時) アンナ すべての敵、せん滅を確認……。 ルマリア これで……終わった……？ みんなの仇を取れたの……でしょうか……？ ぐす……父様……母様……ごめんなさい……。 守り切れなかった私を……許して……。 激情に駆られた我が身をお許しください……。 ニコラウス 前を向くのじゃ、ルマリア殿。 この光景こそ、これから貴方が生きる 世界そのものなのだから……。 ルマリア 涙で何にも見えないですぅ……ふぇぇ……。 ニコラウス 何も見えなくて結構！ 世界とは未知にして、未踏の地平！ 共に歩んでいきましょう！　がっはっはっはっ！ ルマリア はい……ありがとうございます……。 ぐしゅ……ありがとうございますぅ……。 アンナ 王子、ルマリアさんを、 これからは私達も一緒に支えていきましょうね。 #endregion(6：終了時) //＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ #endregion(6：全体) //＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ // // #endregion(ネタバレ注意) }} #style(class=split_r){{ &edit{編集}; }} #clear

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