まつじ/象を捨てる42
Last-modified: Mon, 25 Jan 2021 00:00:50 JST (981d)
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僕は泣かなかった。
代わりに象が残った。
象はすでに大きくて、いつの間にか部屋に住みついていた。彼女がいなくなって部屋は広く自由になったはずなのに、象がいるせいか、快適でない。狭いので、僕は象のお腹の下で眠るしかなかったが、彼女のことばかり考えてしまう。もう、いなくなったのに。
やっぱり、象のせいで気分が滅入ってしまうのに違いない。放っておいてもいなくなる気配はなく、何日かして、僕はようやく象を捨てることにしたが、大きすぎて扉から外に出せなくて、仕方がないので部屋ごと捨ててきてしまった。
少し涙が出た。
僕の後ろで、象の欠片がひょこひょこと付いてくるのを、今は見ないふりをした。
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この話が含まれたまとめ 
評価/感想 
初出/概要 
超短篇・500文字の心臓 / 第42回競作「象を捨てる」 / 参加作
執筆年 
2004年?
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