まつじ/象を捨てる42

Last-modified: Mon, 25 Jan 2021 00:00:50 JST (35d)
Top > まつじ > 象を捨てる42

読む Edit

 彼女は、僕の部屋から出て、それきり戻ってこなかった。

 僕は泣かなかった。

 代わりに象が残った。

 象はすでに大きくて、いつの間にか部屋に住みついていた。彼女がいなくなって部屋は広く自由になったはずなのに、象がいるせいか、快適でない。狭いので、僕は象のお腹の下で眠るしかなかったが、彼女のことばかり考えてしまう。もう、いなくなったのに。

 やっぱり、象のせいで気分が滅入ってしまうのに違いない。放っておいてもいなくなる気配はなく、何日かして、僕はようやく象を捨てることにしたが、大きすぎて扉から外に出せなくて、仕方がないので部屋ごと捨ててきてしまった。

 象には、彼女の名前がついていた。

 少し涙が出た。

 部屋にはそれきり戻らない。

 僕の後ろで、象の欠片がひょこひょこと付いてくるのを、今は見ないふりをした。

ジャンル Edit

恋愛リアル泣く?彼女

カテゴリ Edit

超短編/サ行

この話が含まれたまとめ Edit

すぐ読める

評価/感想 Edit

初出/概要 Edit

超短篇・500文字の心臓 / 第42回競作「象を捨てる」 / 参加作

執筆年 Edit

2004年?

その他 Edit

Counter: 14, today: 1, yesterday: 0