Jと目が会ったのがいけなかった。派手なピエロがやって来るからまじまじ見ていたら、それがJだったんだ。Jのやつ、ニヤニヤ近づいてきて「よぉ、K。なかなか似合うだろ」なんて言う。うなずくと「いい仕事なんだ。誰にも気兼ねしないで働きたい時だけ働けて、食事も住むところの心配もいらないんだぜ」って言う。無職だった僕はついJの言葉に乗ってしまった。Jは満面の笑みを浮かべると「じゃ、ちょっとこれ持っててくれよ」ってトランプを一組、僕に渡した。そのとたん「ひゃははは、やった!次はおまえがジョーカーだ!」ってJは消えてしまった。ああそれからだ。気がつくと僕はピエロの姿になっていた。それ以来、食べることも眠ることもない。僕の姿は誰にも見えず、声も届かず、他人に触れることもできない。孤独に気が狂いそうになりながら僕は街を徘徊していた。そんな時だ。「あれ?Kじゃないか。なんだその格好?」 A? 僕が見えるのか。見えるんだね。ああA、会えてうれしいよ。これを受け取ってくれよ。今度は君の番だよ。僕はトランプをAに押し付けた。