よもぎ/湖畔の漂着物 の変更点

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*読む [#v756eadb]

> この川を下れば、きっと湖に辿りつく。俺はそう信じて舟を漕ぎ続けていた。だが川幅は日ごとに狭まり、草木もまばらになっていく。岩と砂の荒野はもはや砂漠というに相応しい。
> とうとう船底が砂を噛んだ。あきらめるものか。
> 川に沿って歩いた。無情の砂が水を飲み干す。
> 川は消え失せた。
> 間違っていたのか。荒涼たる砂漠に陽が落ちる。落胆を抱え寝袋に入った。
> テントの外がぼんやりと明るい。月が昇ったらしい。出てみると、照らされた青い砂漠が見えた。あれは?
> 遠く波打つ地上の満月。
> 水!水だ!
> 水鏡に映る月に向かって駆け出す。湧きだす水は滔々と広がる。辿りついた時には、湖と呼んでいい大きさになっていた。
> 俺は正しかった。涙が頬を伝う。夢見た湖。
> 美しい波間に浮かぶ光。
> 光?
> それは、屋台に掲げられたランプ。
> 色とりどりの果物。
> 山と積まれたパン。
> 絹を纏った踊り子。
> ラクダの隊商。
> 水面に浮かび上がる古の人々の営み。岸へ流れつくと、一瞬で蘇るにぎやかなオアシス。湖畔はバザールの喧噪で溢れ返っていた。俺は雑踏にポツンと座り込んでいる。人々は陽気に語らい、食べ、歌い、そして疲れを癒す。
> 西に傾き始める月。
> 消えていく。ひとりふたり。ラクダ。バザール。そして湖。
> 砂は静かに全てを包み込んだ。
> 俺は大きく息をついて立ち上がった。夜明けの砂漠にはもう何もない。

*ジャンル [#b1805ff7]
[[幻想]]、[[異国]]、[[砂漠/沙漠/荒野]]、[[川]]、[[湖]]、[[水]]、[[夜]]、[[月]]、[[俺]]
*カテゴリ [#ma4c4d6a]
[[超短編/カ行]]
*この話が含まれたまとめ [#ra1330af]
すぐ読める
*評価/感想 [#n9b24063]

*初出/概要 [#s9457be1]
超短篇・500文字の心臓 / 第134回競作「[[湖畔の漂着物>超短編/カ行#b52bda01]]」 / 参加作
*執筆年 [#c5577756]
[[2014年]]
*その他 [#scf5b989]

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