まつじ/桃色涙 の変更点

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*読む [#qb9f7393]

> おう、生きてやがった。
> 人の顔を見てそう言うなり、父は死んでしまった。父らしいといえば父らしい。
> 最期なんだったら、お袋にもっと気の利いたこと言やあいいのに。と私が言うと、母は、そうねえ、と笑った。
> 母は泣かなかった。
> ちょっと、寂しくなるねえ、と呟いて、庭の木を眺めていた。
>
>&br;
> まもなく母の容態も悪くなり、私は放蕩するのを止めて家に居ついた。
> 調子がいいと母は、庭に出ることが多かった。
> 桃の木は、祖父の代よりもずっと以前から、この家にあるのだそうだ。
> 今の時期、花は咲いていなかった。
> 息を引き取った母の懐には、白い小さな布が二つ、しまわれていた。
> 
>&br; 
> 父が死に、母が死んでも私は泣かなかったが、やがて結婚し、出産の折、母子ともに危険な状態を乗り越え助かった、と妻と赤ん坊の顔を見た途端、涙がこぼれた。
> 恥ずかしいから誰にも言うなよ、と言うと、妻が笑った。
>
>&br;
> そのときの涙と、長男が生まれてはじめて流した涙を拭った、小さな布切れを二つ、妻は大事に持っている。
> どちらも、白い布地に薄桃色の染みがあるのだった。
> 子どもが庭で遊んでいる。
> もう少ししたら今年も咲くだろうかと話しながら妻と二人、縁側に座りその様子を眺めている。

*ジャンル [#f445b4ef]
[[リアル]]、[[生命]]、[[家族]]、[[笑う]]、[[赤ちゃん]]、[[妻]]、[[父]]、[[母]]、[[わたし]]
*カテゴリ [#la074cfd]
[[超短編/マ行]]
*この話が含まれたまとめ [#df587067]
すぐ読める
*評価/感想 [#f945b15c]

*初出/概要 [#i959531a]
超短篇・500文字の心臓 / MSGP2006 準々決勝第1試合参加作
*執筆年 [#jf2ad9ba]
[[2006年]]

*その他 [#l3c13d77]
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