海音寺ジョー/近未来の交差点ゲーム

Last-modified: Thu, 23 Feb 2017 22:35:30 JST (880d)
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 前から老人が歩いてくる。頭の上には黄色い光球が浮かんでる。

(徘徊者か)

 交差点の信号が急ピッチで変わる。センサーが正常に機能しているんだ。通行人も、みなわきまえている。


 僕たちは学校の帰りに、いつもこの交差点でゲームをするんだ。次に角を曲がってくる老人が、黄色か赤か、無色かを賭けるのだ。

 福祉の政策が発展して、要介護のお年寄りを病院や施設に閉じこめるんじゃなく、解放してあげて、自由に外を歩けるように「しるし」を付ける時代がきた、と社会で習った。


 もしも頭の上の光表示が黄色なら転倒に注意してあげて遠巻きで見守りをしてあげる。赤点滅なら救急車か警察を呼ぶ、という決まりだ。認知症という病気がとても多くなって、社会はお年寄りに優しい形に変わってきたんだと社会の先生が言ってた。ぼくたちは、生まれたときから光球ルールがあるから、これこそが自然な普通の風景なんだけど。


 今日もいつもの交差点で友達二人と賭をする。

「僕は無色」

わたしは黄色」

「じゃあ、俺、赤にするか」

 赤はなかなか無いから、博志が勝つ率は低い。博志は優しいやつだ。もしも赤が来たら由美と小遣いを出し合ってアイスを買ってやろう。

 角を曲がってやってきた老人、顔に見覚えがある。

「そんな、バカな」

 僕のおじいちゃんだ。でもそんなはずはないんだ。おじいちゃんは去年なくなったから。さらにおかしいのは、頭の上には金色の輪っかが光ってるんだ。そんなのは今まで見たことがない。

 ぼくは硬直した。おじいちゃんと目があった。ぼくは息をのんだ。その直後、大きいトラックがおじいちゃんの前を通り過ぎてって、おじいちゃんの姿はかき消えてしまった。

「今日はなかなか来ないわね」

「よし、賭けはまた明日にしようぜ。駄菓子屋でサプリドロップ買って帰ろう」


 どうやら、二人にはおじいちゃんは見えなかったようだ。

 駄菓子屋へ着くまでに、おじいちゃんのことを考えた。死に目には会えなかった。ぼくが学校から帰ると、お母さんになくなったことを聞かされたんだった。あんたは葬儀には来なくていいからね、と言われて、家で留守番しててネット動画を見てたっけ。

 施設には三回、会いに行った。起きてたのは一度だけで、その時はすごい不機嫌だった。後はベッドで寝てて、寝顔しか見なかったな。


 きっとお別れにきたんだろうな、とぼくは想像を巡らせた。トラックで見えなくなる直前、おじいちゃん、どんな顔をしてただろう。ほとんど、覚えてないんだけど、きっとニカッとした、テレビとかでドラマで見るような最高の笑顔だったんだ。そんな風に思うと、そうだったような気がしてきた。


 駄菓子屋に着く頃には、もうそれが確信に近くなってて、ぼくはもう賭けなんてどうでもいい気分になって二人に一番高い、サプリじゃない甘い甘いもち菓子をおごってやったんだ。

ジャンル Edit

SFリアルお菓子色彩祖父

カテゴリ Edit

掌編/カ行

この話が含まれたまとめ Edit

選評/感想 Edit

初出/概要 Edit

第102回 時空モノガタリ文学賞 【 ギャンブル 】 参加作

執筆年 Edit

2016年?

その他 Edit

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