よもぎ/テレフォン・コール
Last-modified: Thu, 14 Apr 2022 23:39:28 JST (345d)
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朝。手の中でスマホが震える。『彼』からだ。
「おはよ。そろそろ起きて。いい天気だよ」
返事はしない。けれど『彼』の声で気持ちよく目覚める。
通勤電車の中。イヤホンで聴く『彼』の声。
「今日は11時からミーティングだね。19時には「ボーノボーノ」で女子会だよ。楽しんできてね」
返事はしない。けれど『彼』が私のことをわかっていてくれるのがうれしい。
昼の休憩時。ミーティングで叱られた。『彼』にコールする。
「大丈夫。ボクがついてるよ」
返事はしない。けれど『彼』の声を聴くとヘコんだ気持ちが楽になる。
退社後。『ずいぶん歩いているけど大丈夫?ボーノボーノの場所?OK!ボクが案内するよ。まかせて』
おかげで無事到着。お礼は言わない。けれどいつも私を見守っていてくれる『彼』。
そんなスマホアプリが流行っているのだそうだ。GPS、ナビ、スケジュール管理、検索サイトなどと連動し、自分の好きな声優の声で、状況に応じてボイスメッセージを随時送ってくる。かくして彼女は常にスマホを持ち歩き、『彼』の>声に癒され助けられて日々過ごしている。これは『彼』に恋した一人の女性の物語。
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この話が含まれたまとめ 
評価/感想 
選評結果 正選0点・次点1点・逆選3点
初出/概要 
超短篇・500文字の心臓 / 第152回競作「テレフォン・コール」 / 逆選王作
執筆年 
2016年?
その他 
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