まつじ/鈴木くんのモロヘイヤ
Last-modified: Thu, 22 Sep 2022 23:28:57 JST (185d)
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「お? 順調順調、バッチシよぉ」
と鈴木くんは歯を見せて笑った。
「そっちは?」
「おう、こっちも順調、バッチシよぉ」
口調を真似て、言い返してやる。
何がきっかけか担任の先生が家族の好きな野菜を育てようという課題を思い付いたのが事の始まりで、あたしたち曰く
「意味分かんねぇ」
あたしは面倒くさいからカイワレを育てることにしたのに案外マジメで、
「モロヘイヤ、父ちゃんが好きなんだ」
「何それ、食べたことない」
「あー、ねばねばするホウレン草みたいな」
「うぇー、あたし無理だぁ」
俺は嫌いじゃないけどな、と言ってニッと笑った。
あたしのカイワレはそののちすくすくと育った。その話をしたら、すぐには返事をせずに、うちはもうダメかもなあ、難しいや、と目を細めてなんだかやけに柔らかい。
「つぅかさ、モロヘイヤのモロって何だよなぁ」
「モロ、ねばねば、みたいな?」
「お前、バッカだなぁ」
それから数日後、鈴木くんは転校してしまった。家に帰って、モロヘイヤって食べたことあるかお母さんに聞いたら案の定、あたしは好きじゃないなあ、という答。そんなことより勉強はどうなのよと返されたから
「お? 順調順調、バッチシよぉ」
歯を見せて笑ってみる。
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初出/概要 
超短篇・500文字の心臓 / 第128回競作「鈴木くんのモロヘイヤ」 / 参加作
執筆年 
2014年?
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