まつじ/設計事務所
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かちかちっぽいよね。と口にした矢先に、なんだったらカチカチ山かもしれない、とも言う。
たぬき?
と尋ねたらその可能性もあるとかないとか、聞けば聞くほど定まらなくって一体何がかちかちなものか、雰囲気そんな感じがするということらしく、
つまりは口から出まかせだよね→ ああそうだよ。
しばいたろか、と思うのも暑苦しくて、それよりは喫茶店で茶ぁをしばいて涼をとりたいが我々にそんな贅沢をする小遣いはない。
ラムネ瓶ももはや空っぽ。
すぐさま汗になって流れてんじゃなかろうか。
太陽がじわじわ攻めてくるような気候と蝉の声にじりじりじりじり取り囲まれながら、噂の絶えない廃ビルの看板、掠れた五文字を見上げているというか自然そういう姿勢になってしまうというか。
で結局なんなんだよ→ 誰かが人造人間みたって→ たぬきは?→ 人造、たぬき……→ ていうか、工場とか研究所とかじゃあないんだよな→ にしちゃデカいね→ あー。人造人間、宿題やってくんないかなー→ 夏休みはね、休めばいいんです→ ……→
「暑ィなあ」斉唱。
その間にも、汗が垂れる垂れる。
絶対にラムネ飲んだ分より出てるぞこれ。
正体不明の廃屋が背中を丸めた僕らの前で、陽炎歪む。
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この話が含まれたまとめ 
評価/感想 
初出/概要 
超短篇・500文字の心臓 / 第133回競作「設計事務所」 / 参加作
執筆年 
2014年?