まつじ/エジプト土産
Last-modified: Thu, 09 Dec 2021 23:50:03 JST (720d)
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「ほいじゃあ行ってくんね」
そう言い残して彼はなかなか帰って来ない。
待てばカイロの便りあり、なんてくだらない手紙を寄越してからさき、すっかり行方知れずだ。
例の便りには、まあ取るに足らないことまで、電話で話したほうが早いだろうにと思うくらい山ほど書いてあって、よほどあちらの生活が楽しいのらしい。
飛行機の中からはじまって、空港の様子やにおい、人混みや街並、空の色、通り過ぎた風景、イメージと実際の違い、一日目、二日目それ以降、ピラミッドを見ながら食べるケンタッキーフライドチキン、知り合った人、私に何を持って帰るか悩んでいること、スフィンクスの子ども、買ってしまったよくわからない置き物、夜の灯り、ラクダの顔とまつ毛、砂と月と星。食べ物も舌に合ったみたいで、そこのところも割と細かく描写しようとするから余計に文面が長い。スフィンクスの子どもって何だろうか。
夢で帰ってくる彼がくれるのはいつもそれで、決まってそいつは小さくにやりと笑い私に謎かけてくる。
何か面白いものを頼むよとは言ったけど、その件でおかしなことに巻き込まれてやないかしら。
たまにひやひやする。
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評価/感想 
初出/概要 
超短篇・500文字の心臓 / 第98回競作「エジプト土産」 / 参加作
執筆年 
2010年?
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