海音寺ジョー/頭蓋骨を捜せ
Last-modified: Wed, 24 Jun 2020 23:57:30 JST (1780d)
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太古、人の脳の中に入り込める、浮霊の一族がいた。
自身の意識を分離電位帯と化し、頭蓋骨の隙間から侵入し、他人の頭の中を泳ぎ、心の内部を覗き見る、特殊な能力。
赤ん坊は頭蓋の継ぎ目が閉じてないので、入り込みやすい。普段は赤子の脳をたゆたい、その無垢な意識の中の景色を遊覧し楽しむのが、ルドラの日課だった。
ある日、ルドラが赤ん坊の脳の中に入ると、いきなり視界が真っ白になった。
「なにかがおかしい・・・!これは、本当に人の心の中か?」
ルドラは危険を感じて、外の世界に戻ろうとした。だが、来た道を引き返せども、赤子の脳の空間から戻れない。
「おかしい、オレは確かに骨の隙間を通って、こいつの頭の内部へと侵入したはずなのに・・・出口は何処だ?頭蓋骨の天蓋は、何故こんなに遠い?何処へ消えた?」
ルドラがふと下を見ると、そこには渦を巻く白い積雲と、青く美しい海が見えた。それは球状をしていて、その周りには漆黒の空間が取り巻き、無数の星が燦燦と光っていた。
インドの古文献『リグ・ヴェーダ』によると、世界は原初混沌の中に生まれた、ヒラニヤガルバ(黄金の胎児)が創ったと云われている。
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評価/感想 
初出/概要 
超短篇・500文字の心臓 / 第83回競作「頭蓋骨を捜せ」 / 参加作
執筆年 
2009年?
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