高校合格が嬉しかったのは、合格したことよりも隣町に通学できることだった。今どき、どの国でも何処からでも通信通学を許容しているけど、この家の空気もこの町の空気も吸っていたくなかったから。
通学定期は、わたしを無敵にした。4人乗りの超小型鉄道が3時間に一本とはいえ、なんとか走ってくれることで隣町へ行く自由が担保されたからだ。
そして自由は、わたしを強くする。
自由が担保されればサマンサで鞄を買って使うことができるし、ケイトのネックレスを纏って歩くことができる。冷やかされることも罵られることもない。そもそも今まで周りにいた人たちは、100円ガチャアクセと区別が付かない人ばかりだった。
お金があるわけじゃないけど、買うことも着飾ることも自由。わたしはわたしをなりたいわたしに仕立て直すことができる。
「高校デビュー」を否定しないけど、それは外からの評価で、わたしの中では値上がりも値下がりもしていない。しいて言えば表出しただけ。
けれど、表出したことでわかる人がそばに現れることもある。
「可愛いのしてるね。ケイト?」
そう言ってくれた先輩の小指で輝いていたピンクゴールドのリングが、今の目標。