夕暮れ時、浜辺で拾ったのは封蝋された瓶詰め。くすんだガラスの中は砂時計のようにサラサラとこぼれる気配。さっそく持ち帰って開けてみる。ラベルには、しずくのアイコンに×印。水濡れ厳禁ということか。ならば、水を入れてみねばなるまい。
私はガラス瓶に水を注いだ。すると小さな粒は水を吸って膨らみ、たちまちセーラー服になった。ガラス瓶の口から何百何千のセーラー服が沸き立ち、舞い上がる。部屋の中は嵐のようになり、私は死にもの狂いで窓を開けた。
セーラー服は待ち構えたように空へ飛んでいく。手をとりあい、さざめきあい、はしゃぎあい、スカートの裾をふくらませ、西の空いっぱいに、むわむわとひしめいた。やがて襟元からキラキラと夕陽を漏らし、赤く赤く染まりながら、遠く遠く水平線の彼方、闇に消えた。