ふっと耳を澄ましたらァ、流し台にある蛇口からどうも水が漏れているようで、滴がシンクとぶつかる度、ぼつん・ぼつんと拍子を打つ。こうなると、時計の音も、やけに入って来るもんで気に障るので耳に手を当てれば、今度は血潮の流れるらしいのが絶え間なく聞こえる。
窓の外に置いた、鉢植えの植物は何という名であったか、貰い物であるからすっかり覚えていないけれど、葉がそよいで、拍子を打つようだ。雲がゆっくりと流れお天道様が見え隠れするのを何かが反射し陽の光が瞬く向こうでは、工事中のクレーンが緩やかに同じ動作を繰り返している。
お父さんが、繰り返し、繰り返し同じようなリズムでお墓に水を静かに浴びせて、掌を合わせる姿が瞼に残って離れませんでした。
病室で、誰かの母がすうっと上げた手が、何かを掴むようで心が苦しい。
知らない赤ん坊が空に向かってじゃれているみたいで不思議に思えるネ。
ひとひらの葉が、くるんくるんと宙を滑って揺れては落ちる。
この目に見えねど、惑星というものは周回するという。
何もかもが、ひとつで、廻っていくように思えたのだ。星の瞬きさえも。