四角四面の真っ白な部屋で、俺は知らない女と二人きり、突然のことにどうしていいかわからなかった俺に、女は優しく話しかけてくるので、ぽつりぽつりと話を続けるうちに、実はこの女をよく知っている自分に気付き、違和感の最中にいる俺を後目に、言葉だけがつらつらと淀みなく、知ってはいるが確かに今会ったばかりの女に、どうしたことかときめいているのが自分でもどうしても解せなかったものの、事は俺の意志とは無関係に進んでいるのか、俺の意志でない俺の意志は女を求め、女もまたそれに応え、二人は艶やかに交わり、それを見ているのはお前、そうお前だよ。俺は本当は知っているんだぜ。お前が、俺に蕎麦を食わせたり、俺に愛しい人を殺させたり、もっと色々のことをさせたのを。満足か、それとも不満かね。俺は、お前から出られない、出口のない、お前が作ったこのちんけな劇のしがない役者。満足かよ、この野郎。どうせ聞こえないんだろうがよ。
二人は事を終え、また静かに愛を語り合う。お前の目の前で茶番を演じる。せめて、女、俺はあんたに本気で惚れよう。