あのう御邪魔しますよ。と雑作もなく開く戸をちょっと怪しむ。怪しみはするけど背に腹は変えられない。なんせ雨を凌ぎたいから臆しちゃらんない。これが何かのはじまりだとしても臆しちゃらんないんである。当たり前のように外は闇夜で逃げ場がない。今に至る事情も朧ろで迷惑千万、気まぐれな悪意に放り込まれた心地の目の前で、お骨ががたがた物申す。
云っても只の骨、恐れることはない。死なんか連想するわけがないのは、飯を見て畏れることがないのだから実に道理が通っている。
過日、家人に逝かれてサ。と此方の身の上を述べると、それは気の毒と頭蓋を垂れた。なんだか、彼方の御多幸をお祈り申し上げたい。
それから長い長い思出話を中略、何時の間に、お骨の方が眠ったのかと思われた頃合い、
あのう御邪魔しますよと開かれた戸をちょっと怪しむ。