まつじ/指先アクロバティック16 の変更点

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*読む [#dc856531]

> 俺は走った。走り出してすぐ、はたと止まる。宙返りができない。得意の宙返りができない。
> 右手の人差し指と中指だけが、辛うじて、小さく、前後に動く。病室のベッドの上に男は寝ている。
> 俺はまた走った。走り出してまたすぐ、はたと止まってしまう。どうしても、宙返りができない。得意の、ムーンサルト、後方二回宙返り一回ひねり。
> 男の二本の指は、それを再現しようとするのだが、実際は震えながら、相変わらず、小さく動くだけ。ほんのわずか、微かに動くだけ。
> 俺の、宙返りを、誰か見てくれ。
> 男の体は動かない。親族か、恋人か、傍らにいる誰かが、男の指がほんの少し動くのを見ただけ。
> 目の前に道化が現れて、人差し指と中指だけで綱渡りをしろなどと言う。突然、俺は綱渡りの台に立っていて、道化は耳元で囁いた。向こうまで辿り着いたら、また、宙返りが出来るようにしてやる。ロープの下は真っ暗で底が見えない。無茶を言うと思ったが、俺は道化に唆されるまま二本の指でロープに逆立ちになった途端にバランスを崩した。
> 男の指が一瞬痙攣して、止まった。
>&br;
> しばらくして、それからまた、ゆっくり、動きだした。

*ジャンル [#le9878d0]
[[サーカス]]、[[運動]]、[[体]]、[[指]]、[[2]]、[[俺]]
*カテゴリ [#ub7d9e27]
[[超短編/ヤ行]]
*この話が含まれたまとめ [#mc58de88]
すぐ読める
*評価/感想 [#ad8f3e75]

*初出/概要 [#lc10f6ce]
超短篇・500文字の心臓 / 第46回競作「[[指先アクロバティック>超短編/ヤ行#f52acf5d]]」 / 参加作
*執筆年 [#wb518783]
[[2005年]]
*その他 [#f687ebf1]
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