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*読む [#o0212d68]
>物語は、乱暴に言ってしまえば、最終的には読者が完成させるのです。
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>私が判りにくい死に方をしたので皆困ったようだ。
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>最近思い詰めていたような気がします。
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>誰かが言う。
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>何故あいつが。
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>他殺と決まったわけではありません。
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>あそこの倉庫で。
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>この辺も物騒だからね。
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>私の死についての物語が組み立てられて、時に壊されまた組み立てられていく。
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>暴行された形跡はありません。
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>じゃあなんでこいつは全裸で死んでるんだ。
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>私は小説を書いていました。書いても書いても上手に出来ず、少し疲れてしまったのです。
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>何だこれは。
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>遺書、にしちゃおかしいですね。
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>けれど私は面白い事を思い付きました。
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>訳が分からねえ。
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>読者は、作者が与えた情報を繋ぎ合わせ自らの内に物語を作るのです。
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>こんなのが物語なものか。
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>私が与えたのはただの記号。
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>あの紙切れに意味なんか無かったんだ。
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>一筆だけの、私の小説。
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>どうかしてる。
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>母さんは、あれを昔私が絵に描いた星だと思うでしょうか。
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>奥さん、落ち着いて聞いて下さい。
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>それは違います。だけどそうだな、どうかたくさんの物語が生まれますように。
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>彼の小説は、瞬いてその願いを誰かに伝えることもない。
*ジャンル [#m3c2d5c7]
[[物語]]、[[クライム]]、[[メタ]]、[[読者]]、[[母]]、[[彼]]、[[わたし]]
*カテゴリ [#fef6a3d1]
[[超短編/その他]]
*この話が含まれたまとめ [#x9a6ef4f]
すぐ読める
*評価／感想 [#ie813d69]
*初出／概要 [#a5afa750]
超短篇・500文字の心臓 / 第55回競作「[[☆>超短編/その他#me50e03c]]」 / 参加作
*執筆年 [#pc2894f9]
[[2006年]]
*その他 [#wc8e701c]
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