マンジュ/緑の傘 のバックアップ(No.1)
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追いかけっこに疲れたのであっくんと一緒に木蔭で休む。ぬしさまと呼んでいるその木は、あっくんと二人、向こうとこちらで手を繋ぎ合ってわっかをつくろうにも抱えきれないほど太くて大きい。葉っぱは緑色が濃くて奇麗だ。幹は特別ひいやりとしている。
ぬしさまの下は静かで涼しい。
追いかけっこの途中で、あっくんとキスをした。瞼を閉じたら陽射しに射られた。上瞼と下瞼が合わさった瞬間、じゅッと熱がはじけた。重ねた唇にも電流が走ったみたいになって、びっくりした私たちは慌てて体を離した。きまり悪さをごまかすように力いっぱい追いかけ合った。
並べた膝が触れ合ったから、ぬしさまの下で、もう一度キスをした。最初はおずおずと、それからひしひしと。
ぬしさまの下は静かで涼しい、閉じた瞼に熱ははじけない。唇の温度は嘘みたいに心地よかった。うっすりと目を開けると、触れ合った膝にぬしさまの影。
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この話が含まれたまとめ 
評価/感想 
初出/概要 
超短篇・500文字の心臓 / 第59回競作「緑の傘」 / 参加作
執筆年 
2006年?
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