よもぎ/金属バット のバックアップの現在との差分(No.2)


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キン。と音を立てて白球が夕暮れの空に吸い込まれていく。

買い物袋を下げたまま、ふと金網越しにグラウンドを覗く。

キン。バットの放つ小気味よい金属音が呼び起こす遠い日の。

あの頃の私は生活に疲れた主婦などではなく。

キン。白球を追うかけ声が記憶にこだまする。

あの時もこうして金網越しに彼を見つめていた。初恋の。

キン。ボールの重みが一瞬にして弾け飛び現実にぶつかる。

結婚という生活はぬるく苦く澱んで重なり。目眩が。

キン。キン。キン・・・。

繰り返される打撃音。夫の背後に迫る自分がよぎる。夕闇がじわりと潜む。

キン!ひときわ高く弧を描いてボールが飛んでいった。

ハッと我に返る。

今晩は枝豆をゆでておこう。

ジャンル Edit

日常夕方買い物野球オノマトペわたし枝豆

カテゴリ Edit

超短編/カ行

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評価/感想 Edit

初出/概要 Edit

超短篇・500文字心臓 / 第39回競作「金属バット」 / 正選王

執筆年 Edit

2004年?

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超短編朗読会「てんとう虫の呪文Podcast」Season4
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