胡乱舎猫支店/うめえよ
Last-modified: Wed, 24 Jun 2020 23:33:33 JST (1737d)
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しょうがないんだ。
あいつのことは皆好きだ。話せないが言った通りよく働くし使えるし何よりいい奴だ。子供らもすごく懐いてる。
でももう隠しておけない。何年か振りの視察。不審に思ったんだろうな、きっと。ウチらのは出来が良すぎるって。
バレたらただじゃ済まない。子供らは特に。逃がそうって話も出たけど…でも。
それに捕まったら酷い目に合うんだ。だったらウチらの手で。それがせめてもの…な。
蔵に残ってたのを使う。そう、ウチらには利かない。昔見たんだ、これを口にしたあいつの仲間…。子供らには見せ>たくない…一瞬だけどな。
夜、大人だけで宴をした。今迄よくやってくれた労いを込めて。これからもって言いたかった、ほんとは。
「だめーーッ食べちゃッ」
突然なだれ込む子供ら。好物を頬張るあいつに叫びながら飛びつく飛びつく飛びつく。
「うめえよ」
え?喋れたんだ、お前。
子供らが鈴生りになってるのがなんか可笑しくて、皆笑った。
「ほんとーー?」
「うんうん」
うなづきながら子供らをそっと下ろしていく。女達が子供らを寝かしつけに出て行った。
なんだ、もう無効になってたのか?ああしょうがないな。
取り敢えず「お代わりどうだ?」
もう答えなかった。
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初出/概要 
超短篇・500文字の心臓 / 第142回競作「うめえよ」 / 参加作
執筆年 
2015年?
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