空虹桜/フッ素
Last-modified: Sun, 08 Sep 2024 23:30:38 JST (37d)
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目の前で彼女が殺されたのはトラウマなのだけれど、それを易々と口にしたら、夏休みのお涙頂戴映画か、ハラスメント帯びたバッシングを受けるので、じっと口を閉じている。
人々は泣き叫ぶ姿を求めるのだろうけど、そう簡単に凍りついた心は動かない。判断と感情は連動しない。
ある意味で、腹を立てたり喜んだりしていたあの頃の、軽さというか、摩擦の小ささが羨ましく思う。自分のことなのに。
感情が動かないのはドライな人間だと思っていたのだけど、実際は違う。冷静なフリでもしなければやりきれないぐらい、エモーショナルの最中なのだ。もしくは、CPUか100%で張り付いて処理落ちしているだけ。
『生きてるとか死んでるに左右されない、丈夫な愛が欲しいね』
「そうだね」
小さな自分の声で目が覚めた。
泣いてはいないし、朝だったから自分の声が契機で起きたわけじゃなく、すぐ会話は淡いに消えた。そもそも夢なんて、ただの夢だ。
顔を洗いながら夢の残滓をそのままに、今日の仕事を思い出す。日常はCPUコストの外で処理される。
そうか・・・いつか「最中」ではなくなるのか。
※初稿につき、最終稿はこちら。
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