海音寺ジョー/水溶性

Last-modified: Wed, 24 Jun 2020 23:54:49 JST (50d)
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 強引に飛べると思った。
周囲の反対を押し切って東京に出て来たものの、あの頃の俺に相応の覚悟はあったのだろうか?

 売れない原稿、掲載ラインに届かない実力、どれだけもがこうと醜態としかとられないもどかしさ、焦慮の日々。どうだい、あれから10年さ。


 数年ぶりに故郷の先輩に年賀状を出した。手紙の形で返事が来た。近況を伝える平凡な年賀状は、彼にはSOSに受け取れたらしい。

「僕の沼君のイメージは、誰もいない真夜中の校庭のトラックを独りで喘ぎ走り続けながら、まわっている姿です」だと。そんな俺を尊敬しつつ心配しています、と書かれていた。


 大学の文芸部の、一回生上の彼とはよく文学と政治のことで論争したものだった。どちらも世間に合わせる器用さがなかったが、10年たち彼は妻帯し管理職に、俺は無職でいる。どう返事を書こうかと考えていたら、手に持っていた手紙が溢れる涙で滲みだした。

ジャンル Edit

リアル東京漫画?手紙数字走る泣く

カテゴリ Edit

超短編/サ行

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評価/感想 Edit

初出/概要 Edit

超短篇・500文字の心臓 / 第92回競作「水溶性」 / 参加作

執筆年 Edit

2010年?

その他 Edit

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