海音寺ジョー/しぶといやつ

Last-modified: Thu, 25 Jun 2020 00:23:04 JST (125d)
Top > 海音寺ジョー > しぶといやつ

読む Edit

「それでは、第46回漫画帝王賞の最終選考会を始めます」

机に伏せられた五束のコピー原稿を、十名の編集がガササッと表に向ける。

 向ける前から、裏写りする程にどす黒い原稿があった。誰もが気を留めずにはおれなかった。


 繊細な筆致。現代社会にフィットした言葉選び。起伏に富む展開。全員が十六歳の才媛の作品を入選に、と態度を決めたが、どうにも、真逆の禍禍しさに凝り固まった、例の真っ黒い画稿、八十九歳の男の初投稿作品に言及せざるを得なかった。

「この作品、竹ペンか何かで点描で描かれてますよね」

隣席の新卒の編集が、眼鏡をかけ直し顔を近づける。

「うお、本当だ。枠線や吹き出しも点描だ」

「定規も使ってませんね。一枚一枚から焦げ臭いほどの、怨念が漂ってくるようだわ」

 誰もが一位に推す作品そっちのけで、八十九歳の画稿、タイトル『横死』に各々が持つ漫画観をぶつけた。結果、八十九歳のぴょん太氏には特別枠で、臨時の賞を与えることに全会一致で決まり、結果通知が送られた。住所が東京郊外の墓地になってたことに、連絡役は一抹の不安を覚えた。


 が、当のぴょん太氏は霊園管理事務所で朗報を受け取り、呵呵大笑して線香で次作に取り掛かった。

ジャンル Edit

コメディサイコ漫画??オノマトペ

カテゴリ Edit

超短編/サ行

この話が含まれたまとめ Edit

すぐ読める

評価/感想 Edit

初出/概要 Edit

超短篇・500文字の心臓 / 第172回競作「しぶといやつ」 / 参加作

執筆年 Edit

2019年?

その他 Edit

Counter: 106, today: 1, yesterday: 0