まつじ/ほくほく街道

Last-modified: Mon, 31 Jan 2022 23:35:08 JST (813d)
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 飛脚から届けられたのは、明日からの手紙であった。いかにも私の書いた字であるが、未だ来ぬ日のことであるから、身に覚えのないことでもある。

 愛想のない飛脚の姿はすでに見えず、足跡もないような。

 首を傾げたところで訊ねる相手もおらず、天を仰げば悠長な様子で鳶が飛んでいる。犬が歩けど棒にも当たらぬ天下泰平。よもやの事も起こりそうにない。

 同じような昨日も、飛脚が立ち現れ、たちまち煙のように消えた。

 一昨日にも、いかにして所在を知ったのか私を呼び止め、やはり私のしたためたらしい手紙を渡すと音もなく霧散した。

 それにも増して妙なのは手紙の内容で、道中起こる災禍を教えてくれるのであるが、それを避けた私自身は飛脚に手紙を渡す以前に書くべきことも起こらないのだから謎は深まるばかり。

 呑気にそのようなことを考える私は団子屋におり、口の端のみたらしを舐めては茶を啜る旨い。昨夜の蕎麦も旨かった。

 さて、手紙の主は無事であろうか。

 当の私は、夕暮れまでには宿場町に着くだろう。

 何事もなく、街道をゆく。

ジャンル Edit

時代物SF飛脚?手紙団子?お茶昨日わたし

カテゴリ Edit

超短編/ハ行

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評価/感想 Edit

初出/概要 Edit

超短篇・500文字心臓 / 第185回競作「ほくほく街道」 / 参加作

執筆年 Edit

2021年?

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