まつじ/そこだけがちがう21
Last-modified: Sun, 20 Jun 2021 23:32:32 JST (1405d)
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ソコダケというのは壺やなんかの底のような暗くて深まったところで育てるキノコで、うちで栽培している。命名したのは妻で、よく食べたりもする。
ぼくの妻は炊事洗濯なんでもござれ、働き者のいい妻になると思っていたら、どうも様子がおかしい。何のことはない、腕はいいけどモノグサだった。
ぼくは会社で働いている。社員への待遇も良く、やり甲斐もある仕事、社会にも貢献していると見えたのだけど最後のだけは勘違い、たくさんの人達を日々泣かせております。
ある日、ぼくが家に帰るなり、散らかった部屋で妻が背中を掻いてと言う。
「あー。そこそこそこ、中から掻いて」シャツをめくって背中を見たら、キノコが生えていた。言えなかったけど。
で、試行錯誤、壺の底で栽培に成功。秘密で育てていたら妻は目敏く見つけて食べてしまった。美味しかったらしい。不思議と背中の痒みもなくなったそうで。
そのまま食べさせたら背中の痕も消えて完治するだろうと思っていたら、痕がなくなったは良かったが、あくる日妻が全身ソコダケになっていた。壺に入れてなかったのですっかり枯れて、まあ。
人生なかなか思い通りにいきません。
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この話が含まれたまとめ 
評価/感想 
初出/概要 
超短篇・500文字の心臓 / 第54回競作「そこだけがちがう]」 / 参加作
執筆年 
2005年?
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