まつじ/納得できない

Last-modified: Tue, 19 Oct 2021 23:51:41 JST (913d)
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 まだたくさん話したいことがあったのに、彼の首から上が見つからない。

 猟奇的殺人、と世間や警察は簡単に言うけれど、けんかをして、それきりなんて。

 あるとき、こころってどこにあるのか、という話になったとき「頭のなか」と答えた彼に「冷たいなー」と冗談みたいに責めたわたしを見て、

「実はぼくは人造人間なのだからね」

 と、まるで生身の体で彼は笑って、頭をこつこつ叩いた。「ぼくの記憶や気持ちは、頭のここら辺りに残るのです」

 けんかの原因は彼の嘘で、それをあのときの私は許すことができなかったけど、よく考えたら私はまだ何もわかっていない。

 何か伝えたいことがあって彼は私にだけ分かる記号を遺したのだと思うから、その頭のいちばん深いところにあったはずの本当のことを私は見つけなきゃいけない。

 怒るのはそれからでも遅くない。

 泣くにはまだ早い。

 かわらない結末、かなしい恋物語、SF、ホラーサスペンス、まさかのハッピーエンド、どこにたどり着くかは知らないけれどいまは何も決まっていないのだから、足を踏み出してから考える考える思い出す。つなげる。考える。を繰り返しながら、歩き続ける。

ジャンル Edit

生命物語歩くわたし

カテゴリ Edit

超短編/ナ行

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初出/概要 Edit

超短篇・500文字心臓 / 第84回競作「納得できない」 / 参加作

執筆年 Edit

2009年?

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