まつじ/しっぽ
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全貌がいまひとつ見えないので「怪獣のようなもの」としか言いようのないそのそれは、足のようなものも見えないから山のようにも見えるが、一晩明けて急に現れる山というのもおかしな話であるし、このしっぽのようなものを観察すると息をしているふしもあるようで、やはり怪獣のようだと言って差し障りないようだと学者は言った。
とはいえ、怪獣であるか否かというのは取るに足らない問題であるのではないか、そんなことよりもこの町のこの敷地を何の許可もなくこんなにも侵しているしっぽのようなこのこれをただちに撤去または排除または破壊して然るべきではないか、と地主がわあわあ騒いだ。
たしかに、このようにばかでかいものがあっては交通の面で若干の不具合はあるが、それ以外には目立って支障もないのだし、だいたい動かすったって一体どう動かせばいいのだろうか、と警官たちは思った。
この世界一大きなしっぽを見ることがなにか良い経験になるかもしれない、と教師が子どもたちを連れて課外授業に来た。
子どもたちのうちの一人が声をあげた。
あれ? ねえ、これホントに
の、そのそれが先の方から長ァく裂けたか笑ったか、
ぺろりで町を飲み込んだ。
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評価/感想 
初出/概要 
超短篇・500文字の心臓 / 第93回競作「しっぽ」 / 参加作
執筆年 
2010年?