胡乱舎猫支店/パステルカラーの神様
Last-modified: Sun, 18 Oct 2020 23:25:06 JST (1664d)
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近所では「お菓子の家」と呼んでいるらしいがまさにそのものだ。どこぞのテーマパークにあるんじゃないか?これ。
ドアを開けたら甘ったるい匂いが覆いかぶさってきた。鼻を塞がれた気になったのは自分だけじゃない筈だ。
中は不透明水彩の白を混ぜ込んだ様々な色で塗り潰されていた。壁も床も何もかも全部。フワフワした感じなのに妙に重みがある気がする何かこうぼってりとした。
入り口から廊下階段各部屋そして浴室に迄、老若男女が横たわっていた。みんな内装と同じ色調のローブとか言うものを着ている。
「此処にもいるぞ!」
トイレのドアを開けた奴が叫んだ。
「OGAMIBA」のプレートが掛かった部屋の入って正面の壁には13枚の「教祖」の写真。どれもが引き延ばされたプリクラにしか見えない程加工されていて花とフリルで縁取られていた。
「おい、触るんじゃないっ」
床に散らばっていたアーモンドドラジェに手を伸ばそうとしたら同僚が怒鳴った。
「計27名、幼児3名を含む」
その中に「教祖」はいなかった。
逃げたのか?
それとも先に行ったのか?彼らが願う「てんごく」とやらに。
あの色彩に溢れているらしい救いの場所へ。
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評価/感想 
初出/概要 
超短篇・500文字の心臓 / 第178回競作「パステルカラーの神様」 / 参加作
執筆年 
2020年?
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