よもぎ/衝撃30
Last-modified: Thu, 20 Aug 2020 23:01:12 JST (1768d)
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祖父・洋次郎88歳。昭和21年8月生まれ。祖父の日課。昼間はうとうとしている。日が暮れる頃になると自室に籠る。白い手袋をはめる。ラックから1枚の擦り切れたLPレコードを取り出す。レコードジャケットをしみじみと眺める。ジャケットから薄いビニール袋に包まれたレコード盤を取り出す。スプレーを薄くかけクリーナーで溝にそって一点の曇りもないように丹念に拭き取る。盤にホコリをつけないよう注意しながらプレイヤーの上に乗せる。そっと針を落とす。じじじじじ...微かなノイズの後、コーンを震わせ大音響が鳴り響く。
お おおお おおおおお なに なに これ スゲェ 凄ぇよ
おぉ なに何 この音 どうなってんの これ おお カッチョえぇ
ちくしょっ 頭が 体が 勝手に なんか うひゃ キモチいい
スゲェ 凄ぇよ こんな 音楽が あったの か うぉお おおおお
祖父は、生まれて初めてあのレコードを聴いた夜を毎晩のように繰り返す。
家族の顔はもう覚えていない。
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この話が含まれたまとめ 
評価/感想 
初出/概要 
超短篇・500文字の心臓 / 第34回競作「衝撃」 / 参加作
執筆年 
2004年?
その他 
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