まつじ/やわらかな鉱物

Last-modified: Wed, 19 Oct 2022 23:58:38 JST (547d)
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「そういう事情があってね」

 カクカクシカジカの末尾に溜め息を添え麗しの彼にそんな説明をされたらその体に触れたくっても触れちゃあダメってことになってしまうから、わたしにとってそんな仕打ち正味なところ苦行に近い。

 さわりたいさわりたい。

 さわりたいけれど、たとえばこの親指と人指し指の腹でその左耳を撫でようものなら、いかにもカタブツな彼のアイデンティティは崩壊しその体はもはや彼ではなくなってしまうんかもしれないんだって云う。

 うーん、それそれで、きもちいい、気配。要は自信がないってことかしら。

 彼の云うことはいつだって、わたしにはさっぱり分からない。それでも惹かれる摩訶不思議。きれいは汚い、みたいなミステリアス。ものの喩えじゃなく、本当に彼は人ではないのかも。触れたら、ひんやりと優しくて、それだけじゃない何かがあるんだろう。

 だから触れたいけど、まだ触れず、想像するだけでいる。

ジャンル Edit

リアル初期衝動?触る?オノマトペわたし

カテゴリ Edit

超短編/ヤ行

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評価/感想 Edit

初出/概要 Edit

超短篇・500文字心臓 / 第132回競作「やわらかな鉱物」 / 参加作

執筆年 Edit

2014年?

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