「そんな名前ついてたっけ?」
左折の時、表示板を二度見した。いつも通る道なのに全然気づかなかった。まあそんなもんかもしれない。
「街道って街中通ってるイメージだけどこんな山奥にもあるんだ。字面に騙されたな」
ついつい独り言。
「ねぇ、カフェ寄ってかない?海岸沿いの」
「え?」
サイドシートからの提案に驚く。
「そろそろいい時間じゃない?テラスで太陽が海に沈むの見ようよ」
遠くに建物が見えて来る。多分あれがそうなんだろう。波音が聞こえる。右側に夕暮れに染まりかけの海が広がっていた。いつの間にか開いていた窓、湿った潮風が纏わりつく。左側は見れないまま車を走らせていた。…一体…ココは一体…何処…なんだ?隣にいるのは…コイツは誰…なんだ?