あまりいい言葉だとは思わないけど「ビール女子」が市民権を得てくれたおかげで、一人ビアフェスで呑んでいても、ウザ絡みされることは減った。とはいえ「6月のオクトーバーフェストにいるようなヤツはナンパ目当てだ」みたいな偏見もわからいじゃなくて、結果、ドルトムンダー1lも入った重いグラスを手に、大噴水そばから日比谷公会堂そばに流れつき、本を読む。
夕焼けがはじまり、人々の心もホンノリと躍りはじめる土曜日。読んでた本は、ちょうど最初の殺人が起きたところで、物語にドライブがかかってきた。タイミング的にバッチリ。口の中でビール純粋令が発せられる。
唐突にドラムと電気的に増幅されたヴァイオリンの音が空気を掻き混ぜた。たぶん、オクトーバーフェストに来てた客の大半が音の方を向いたんじゃないかと思う。含む自分。それぐらいセンセーショナルで衝撃的なオルタナティヴのダンスミュージック!
思わず、グラス掴んで立ち上がり、音の方を見てしまった。周囲の人は、もう意に介していない雰囲気で、しかし、ハッキリと世界が変わった実感があった。ビールとか本だけじゃなく、音楽もたしかに世界を変えると初めて知った。
温くなったビールでも、たまらなくおいしかったのは言うまでもなく、重たいグラスはダンスの邪魔をしない。