気がついたらここにいた。いつからいたかなんて、サッパリわからない。覚えていない。
だから。
気がついたら。
下々の者が下々の者らしく下々で生活することに慣れ親しんで幾星霜。音に満ちた日常がここに詰まっている。音を楽しんでいる。
草木も動物もコンクリートも水も空も風も、音を楽しんでいる。常に音はここにあって、満ちている。
だから。
気がついたら。
わたしが認識するわたしの自意識に、わたしが目覚めたのだから間違いない。わたしはここで生まれ、ここで育ち、ここで枝葉を育み、ここで音を聞き続けた。
打ち付ける雨や嵐も、定期的に鳴り響く破壊的な爆音も、穏やかな微風も、同じように揺り籠を揺らし、繰り返す、ありふれた日常。
だから。
気がついたら。
ここにいて、ここに居続ける。