ボリビアの首都・ラパスは周りを高山に囲まれてて、まるですり鉢の底にあるよう。夕闇が辺りを覆うと、山壁に建てられた町々が明かりを灯し、ラパスの全体がネオンで覆われる。視界をはるかに越える360度の外灯のきらめきが壮烈に綺麗で、高山病の吐き気の苦しさを一瞬忘れ、ぼくは絶景に心を奪われる。
地球の裏側、日本にいる君に今この瞬間の、この無尽蔵の光のパノラマを見せたい。
そう思ったとき中央広場(セントロ)のベンチの、ぼくの隣りに座っていた老人が手風琴を鳴らした。『コンドルは飛んでいく』という曲。そのメロディが流れるのと全く同じタイミングで停電がおき、外灯が明滅した。あまりにもリズムが合っていて、ぼくは一つの確信を得た。
街という物語は寓意に満ちている。貧しさも内紛も軍事政権もどうでもいい。老人はぼくにウインクして、ぼくは笑みを返しチップなら弾むさ!と日本語で言った。