助手席からカネトモ君が「あれは、おかしい」と、前方の仏具店を指さしながらいぶかってる。運転の集中力を維持しつつ、見やると全体がガラス張りで、仏具店の割にはど派手だった。
「うーん」確かに不自然だな、と相づちを打つ。もともとはこの辺も賑わってたんだろうな。古代より栄える敦賀港から、京都まで通じる旧街道だし、新幹線・高速道路が人の流れを変えるまでは。今では大手チェーンの飯屋・健康ランド・時代がかった連れ込み宿だけが、ぽつぽつと生き残ってる。
「あっ、そうか」と都会育ちのカネトモ君が、眼鏡の奥の細い目を広げた。
「パチ屋やったんや」
パチンコ屋がつぶれて、空きテナントに仏具屋が入ったのか。そういや、隣町のショッピングモールが、総合福祉センターと化したわ。去年。
まだ路脇には雪が残っている。判子屋の柿渋の木戸に、選挙ポスターが色褪せている。アルトエコのタイヤがアイスバーンを踏み、つるっと滑った。