真っ白なキャンバスがありました。
傍には「自由をお描きください」と看板が立ててありました。
セーラー服の女の子がやってきて、カゴから飛び立つカナリヤを描きました。
自転車に乗った子どもがやってきて、大海原を泳ぐクジラを描きました。
坊主頭の男がやってきて、格子ごしに見える月を描きました。
いろいろな人がやってきて、上から上からどんどん絵を重ねていきました。
やがてキャンバスは真っ黒になりました。
通りすがりの人々は首をひねって絵の前を通り過ぎました。
夜になりました。
暗くて真っ黒なキャンバスは見えませんでした。
けれども見えないキャンバスの上を自在に駆け巡る何かがありました。
ヒョーザザッツィーツイィーザンックルクルクルツイィーツィークルクルザンッ
青い炎を閃かせ、光る花びらを散らし、あるがままに思うがままに飛翔するのでした。
次の朝、真っ白なキャンバスがありました。