「おれは魔法が使えるので、証拠にこの何もない空間にステッキなんぞ出してみようか。ほい。」
「なんだか唐突ですけど、おお、出ましたね。」
「うむ、出たよ。次は何がいいかね。」
「クッキーが食べたいですね。」
「はいクッキーね。ほい。」
「また出ましたね、すごいすごい。うん美味しい。」
「うむ、そうであろう。さて次は何がご所望かね。」
「じゃあ紅茶を。しかし、その、ほい、という掛け声、なんとかなりませんか。」
「何。カップも出さなきゃいかんから、これはなかなか高度だぞ。呪文なんかなんだっていいんだ。ぺぺーん。」
「お、出ましたね。うん、味は少し薄い。ところで、何か他のことは出来ないんですか。」
「煩いやつだね。では、君を消してしんぜよう。ほい。消えた。消えた消えた。」
「ここにおりますが。」
「何。なぜここにいるんだね。」
「魔法、本当に使えるんですか?」
「馬鹿な。君だってステッキが出たって言ったじゃないか。クッキーを食べたりしたじゃないか。」
「そう言った、だけだとしたら。」
「そんな。」
「じゃあ僕があなたを消しましょう。はい。消えた。さて、みなさん見てました?彼は本当に消えたのでしょうか。はたして僕にも魔法が使えたのでしょうか。」