目の前にはいろんなごちそう。
いろんな形、いろんな色、いろんなにおい、たくさんの食べ物がテーブルに並んでいる。
けれど、おいしいかどうかは食べてみないと分からない。
たとえばこの、ちいさなお皿の一品料理。
ちいさいからとてあなどるなかれ。
これが、名も知らぬ料理人の渾身の一品であるかもしれない。
可能性は、おおいにある。
さまざまな料理人がそれぞれ工夫をして作り、出された料理をわたしが食べる。
人はだれも料理人たりうるが、いまのわたしは一人の客として、この椅子に座っている。
さあ、どれを食べようか。
出されたものすべて食べるのが作ったものへの礼儀というものだが、なかなかそうもいかない。
皿をひとつ手にとり、箸を運んで、
一口、がぶり。
がぶり、がぶりと、一口ずつ、食べてみる。
うまいと、ついついもう一口。
つい、もう一口。
うまいものが食べたい、うまいものが食べたい。
もしかしたらそれは、世界随一のゆでたまご。
今日もわたしは料理を食べる。
いただきます。
ごちそうさま。
ああ、美味しかった。
それからズズと茶を一杯、そんなふうに、わたしは死にたい。